第4回 青山俳句工場向上句会選句結果

(長文注意!)

第4回向上句会選句結果です。どんどん過激になって、計80句!内山いちえさんの選句評はいつもながらシュール。向上句会の今後のスケジュールは、第5回を開催した後、6月の投句は一回お休みして、今までの5回分から超特選句を選出しようと考えています。よろしくご参加ください。

向上句会とりまとめ:山口あずさ@援助交際撲滅運動展開中。


投句:たてほ、やんま、松山けん太、またたぶ、村井秋、山田実、山之内拓仙、工藤安之助、久蔦ともみ、一之、岡村知昭、足立隆、カズ高橋、大須賀S字、岡田秀則(秘密俳句結社俳句魂)、大石雄鬼・峠谷清広(以上2名、豆の木)、はにわ(ToT)・南菜風・あかりや(以上3名、NIFTY FHAIKU)宮崎斗士・白井健介・神山姫余・木村ゆかり・中村 安伸・内山いちえ・千野帽子・山口あずさ(以上8名、青山俳句工場)

感想協力:さとうりえ



全体的な感想

はにわ(ToT):80句もあると 選句に疲れちまいますね。。。(+_+).・°フゥ・・・

けん太:早くみなさんの句が見たいと、ウズウズしていました。ページを開けて・・・とても楽しかったです。

帽子:前回に続き2回目の参加です。4月17-18日の青山俳句工場に初参加したら、会場で第1、2回向上句会の選句結果をいただきました。第1回のほしやまさひろさんの句が好きなのでまた読みたい。今回好きな句が前回より多く6+1句に絞るのに苦労しました。そのわりにオーソドックスな句を多く選んじゃって複雑な気分。

知昭:選句を始めるとき、「もし採りたい句が少なかったらどうしようか」と考えましたが、これはいらぬ心配でした。最後には気に入っていた句同士でどちらを選ぶか迷うこととなりました。本当によかったよかった。

たてほ:初めて参加しましたが、とても楽しかったです。よろしければまた参加させてください。

やんま:それぞれ個性が強烈で、???の連続です。なかなかそのポエムの中には入りきれませんでした。

清広:初めて参加しました。しかし、うーん。なるほど、表現が新鮮な句は多いことは認めますが、でも「だからどうした」「そんな事言っても困る」「意味はわかるけど大袈裟だよ」と言いたい句ばかりでした。もっとも、これは私だってそうなんですから、人の事は言えないでしょうが。

りえ:破調が少なかったですね。まじめな姿勢が伺える句(?)が多かったように思います。川柳っぽいのもあったし。無季は普段やっていないのですが自分の中に有季、無季という壁が確立していないのであまり違和感なく読んでしまいましたが。。また来ますねー。


11点句

春の路地ひとつ間違え浄土かな   松山けん太

特選:たてほ 知昭/選:またたぶ カズ S字 帽子 ともみ 南菜風 いちえ 
たてほ:言えそうでなかなかうまく言えない句だと思いました。季語の「春の路地」も春以外の他の季節では、絶対に合わない。非常に季語が生きていると思います。「浄土」との取り合わせも絶妙です。春はとても暖かくどこかぼんやりとした眠い季節です。いつも通る道と、一本違った道が、浄土に繋がっている。そんな想像をかき立てる季節でもあるのですね。
ともみ:「春の」はない方が良いような・・・。
南菜風:ありきたりな気もしますけど、思いがけず大きな桜のもとにたどりついたときのことを思いだして、選句。
隆:いいと思いましたが、七句の次になりました。
カズ:浄土とはきっと居酒屋ですね。
S字:異邦人な気分、ロマネスク。
知昭:句の姿、リズム、イマジネーション、どれをとっても一級品です。しかし間違えて浄土に着いちゃうとあとが大変だろうなあ。
健介:まことに僭越ながら、たとえば<路地ひとつ違(たが)へたる春浄土かな>では?
いちえ:発想がとてもいい。浄土へは出なかったけれど、道を間違えたら交番の前へ出たことがある。
帽子:今回「ゆるやかに奈落に通ず桃の上」もあって、ありがちなのかとも思ったけど、こっちはなにやらおめでたいのがうれしい。中七は再考の余地あるかも。

8点句

桃咲いておりぬ真昼の停電は   中村 安伸

特選:ゆかり 雄鬼/選:ともみ あかりや 斗士 あずさ 
あかりや:都会の日常の中に不意に蕪村の絵画が現実するような不思議なしかし心当たりのある情景をとらえた句です。
ともみ:「桃」「真昼」「停電」の言葉のリレーがおもしろい。
ゆかり:真昼は暗くないから、夜の停電ほど深刻ではないですね。長閑ささえ漂うような気がします。それはちょうど桃が咲いている感じなのかもしれませんね。
りえ:桃に弱いこと露見。まっぴるまの停電と桃の開花って事件性が薄いというところが似通っているかもね。
雄鬼:夜の停電ははっきりとわかるけど、真昼の停電はどこかあいまいです。その部屋の窓から桃の花が見えています。まるで停電の象徴のように。
斗士:ぼんやりとした感じがいい。「桃咲いて」の巧。
いちえ:「停電は」でインパクトが逆に弱まった気がする。
帽子:パラドクシカルな明るさ。最後の助詞が「に」や「を」でないのが好き。
あずさ:天然昼行灯、ぽっ。

菜の花と一緒に帰る昭和かな   松山けん太

特選:あかりや 帽子/選:はにわ(ToT) あずさ カズ ともみ 
はにわ(ToT):スキップ大好きととかかじじばぁ
あかりや:俳句を読んで目頭が熱くなったのは、久しぶりです。
ともみ:「昭和」が少し甘いけれど。でも、懐古特有の嫌みがなくてマル。
カズ:いろいろとあるのですね昭和の思いが。
いちえ:昭和かぁー。♪♪貧しさに負けたー♪♪いえっ世間に負けたー♪♪
帽子:個人的に絶賛の嵐。こんなごくふつうのことばでじーんとしてしまうなんてくやしい。昭和40年代生まれのツボにはまった。
あずさ:昭和さん、さようなら。

7点句

春暑し海図に耳をあてたまま   千野帽子

特選:はにわ(ToT)/選:雄鬼 S字 柘仙 南菜風 いちえ 
はにわ(ToT):ストロー舐めて逃げろフナ虫
拓仙:少しは涼しくなるかもしれない。
南菜風:貝ではなく海図に耳をあてるの図は、美しくはない(変!)けれど、地図の魔力に、ついはまってしまいそう。「春暑し」ではやや凡庸かもしれません。季節感は出ていると思いますが。
雄鬼:海図がいいです。耳をあてている人がとっても大きくなったような。でもそこからは何も聞こえてこないという様子が、春暑しで何となくわかります。
S字:やるせないほどの海への憧れ。共感。
いちえ:「まま」で終わる句に弱いんです。この余韻がたまらないんですよねぇー。

水母(くらげ)だか死んだ伯母だかわからない   千野帽子

特選:あずさ いちえ/選:ゆかり 秋 隆/逆選:安伸 
安伸:面白くなくはないのですが、ちょっと格好悪いのでは。
ゆかり:死んだ伯母はクラゲと通ずるところがあるかもしれないと思いました。楳図かずおの漫画みたいで好きです。最初、特選にしてたんですけど、「水母」というのが「伯母」と並ぶと言葉遊びっぽいというか、ダジャレっぽいというか、つきすぎというか、嫌だったので、並選にしました。あしからず。
秋:かみ所なかった伯母を水母だというのがとても納得できます。そしてどんな伯母か想像できる気がします。
隆:説得力のある句です。リズムもよいし、準特選です。
知昭:「わからない」を形にしてみるとこの句になったんですね。
いちえ:どうしても、こういう句にはまってしまう。でも面白いからいいん「だっちゅうの!」
あずさ:中学三年生の頃亡くなった伯母のことを思い出した。伯母が好きだったので特選にしてしまいました。

6点句

行く春に背を伸ばしたる舞子かな   山田実

特選:健介 S字/選:清広 一之 
清広:そんなに新鮮な句ではない。しかし、のびのびとした気分は、まあまあ出ている。
一之:上質のの甘い叙情をかったが、飯島春子の《寒晴やあはれ舞子の背の高き》と比べると…。
S字:伸び伸びとした表現、モチーフの美しさ。的確。
知昭:「舞妓」じゃないのでこの場合は舞子という名の女か神戸の舞子のどちらかでしょう。私は女性ととります。だから何だというと困りますが。
健介:背が伸び過ぎちゃう悩みというのもあるでしょうね。ともあれ特選です。

チューリップ全天候型安息日   南菜風

特選:安伸/選:はにわ(ToT) 秋 またたぶ 一之 
はにわ(ToT):千両箱の嵩だけ高し
安伸:言葉のハーモニーが自由で、鮮やかです。
秋:チューリップが全天候型だというのにすごい説得力があります。そこがよかったです。
一之:「全天候型安息日」とはうまいことを言ったもの。(季語か無くなるが、曲解?してパチンコ屋の景と読めば、なお愉快)
いちえ:「チューリップ」を「鬱金香」としたらもっとカクカクした感じが出て面白いと思う。
帽子:よくわからんが気持ちいい。

豆もやし首をもたげる春の闇   山口あずさ

特選:カズ/選:健介 またたぶ 雄鬼 秀則 
雄鬼:春の闇がいいですね。心に蔓延してしまった不安感が出ています。
隆:こういう不気味さは好きですが、「もやし」ではいまひとつ恐ろしさがないのが残念です。
カズ:うまいの一言。
健介:「春の闇」が付き過ぎるんだけど「首をもたげる」に採らせれました。
いちえ:「もやし」と「闇」はつきすぎですね。
帽子:生命力横溢。「汎エロチジム俳句」か、それともナムル讃歌か。
あずさ自解:ビビンバが好きです。

木漏れ日は受付嬢を汚します   中村 安伸

選:あかりや 秋 隆 あずさ 知昭 秀則 
あかりや:オートマティズムで書かれた作品のように思えるのですが<汚します>の断定にだまされてみようと思います。
秋::受付嬢はきれいな人のように感じます.口語で、軽い句ですが、私にはよかったです。
隆:このあぶなさがよいのです。なぜ木漏れ日なのか問うのもはばかられる決めつけがよいのです。
知昭:光景と内容がすぐに浮かんできた楽しい句。問題を女性に「汚す」を使った場合の性的な意味合いを考えずにすますことができるかというところ。私の深読みのしすぎとは思いますけど。
健介:汚れちゃっててもぜんぜん構いません、私は。
あずさ:心地よい汚れ具合。
帽子:納得いかない断言。

奈良は春メロンパンには羽がある   松山けん太

特選:ともみ/選:秋 帽子 やんま 南菜風 
ともみ:くそう。またメロンパンに負けてしまった。ちょっとキている感性がすき。
やんま:それは鳩が咥えていったのです。
りえ:見た目としては鱗があるように見えるが。 奈良への飛躍が軽妙だ
秋:奈良のおおらかな春の景色とメロンパンは妙にくっつきます。そして羽があるが又いいですね、春の躍動感みたいなものも感じられて。
南菜風:表皮?の質感を思いました。「奈良」は動くかもしれませんねえ。今のところ、動きませんでしたので選びました。
知昭:この句を読んで浮かんできたのは「うちの女房にゃひげがある」でした。
いちえ:春、「月ケ瀬梅林」へ梅を見に行きました。なぜかしら、目についたのは「みやげもの店」ばかり。奈良は遠い。
帽子:「羽根がある」は言い過ぎだけど奈良+春+メロンパンの並びは好み。先月もメロンパン俳句あったなー。こう続くとさすがに食べたくなってきたぞ。

5点句

物持ちのいい一家なりヒヤシンス   宮崎斗士

選:はにわ(ToT) けん太 健介 雄鬼 知昭 
はにわ(ToT):箪笥の肥やし二次発酵中
けん太:「物持ちのいい一家なり」より初めにあった「一家なりに」の方が、理屈っぽくはなるけれど、ヒヤシンスへの思いがさまざまにイメージできて楽しいなあ。
雄鬼:ヒアシンスの白いごちゃごちゃとした根の様子が、物持ちのいい一家を表しているようですね。
カズ:でももう引越したのでは?
知昭:物を大事にしている円満家族にヒアシンスは実によく似合ってます。どうしてこんなにきっちりとまとめられるのか知りたい。
健介:こういう句に出会えるとホッとします。まだまだ私の居場所もあるかな、と。
いちえ:これ、「物持ち」を「金持ち」にしたら面白いと思うのは私だけでしょうか?
帽子:うまい。こういう句は自分では作らないようにしている。でも他人が作るのはいい。ってたんに自分で作れないだけか。

永遠に斜面をずり落ちてゆく虎   岡田秀則

選:あかりや 安伸 帽子 柘仙 南菜風 
安伸:この句の場合「永遠」が効果的だと思います。「虎」もいいです。
あかりや:私の裡にもある何かの喪失感を象徴的に示されたような気がします。
ゆかり:これはもしかして阪神タイガースのことか?
拓仙:阪神タイガースだな。鯉よ滑り落ちろ
南菜風:屏風絵みたいなのを思い浮かべました。印度あたりの宗教画でもいいな。永遠の下降斜面を思うとコワイですね。永遠にのぼり続けるのと、どっちがより嫌だろう。
隆:なかなか面白い風景デス。永遠というのがやや無理では。
いちえ:今年は「虎年」。縁起でもない事を。
帽子:「永遠に」がバカバカしくてよい。筒井康隆の「傾斜」を思い出した。

自治会や猫の貰い手決まりけり   やんま

選:はにわ(ToT) 隆 カズ 帽子 ともみ/逆選:斗士 
はにわ(ToT):次の決議は会費の値上げ
ともみ:落ち着いた詠みぶり。内容に惹かれる。
隆:捨て猫か、あるいはどこかで生まれた仔猫か、いずれにしろ猫のことで皆が話し合うこと、そういう小さなことをひつつずつ解決していく自治会を運営している人の人格(おおげさかな)まで感じます。
カズ:おもしろい自治会ですね。
斗士:これでは単なる事務連絡。「自治会や」を変えれば、活きてくると思う。
いちえ:うちも昨年9月、仔猫がもらわれてゆきました。名前は「ムサシ」父は「小次郎」。
帽子:自治会という言葉の印象がちょっとアップ。

4点句

弁当を端より減らしゆく春愁   白井健介

選:ゆかり けん太 斗士 一之 
けん太:表現は理屈っぽいのですが、共感できる気分ですよね。
ゆかり:お米を一粒ずつつまんでちまちま食べる場面を想像しました。私はお弁当を真ん中からは食べませんが、なんとなく納得してしまいました。
一之:この「春愁」には実感がある。句またがりがうまい。
斗士:なんだかわかるような気が。
帽子:使いにくい季語のほどよい使用法「減らしゆく」もうまい。手だれの作か。

葉桜やまだ桃色のカメレオン   一之

選:隆 ともみ やんま 秀則 
ともみ:レオ・レオニかなんかの絵本のよう。かわいい。
やんま:桜色でなく、桃色遊びが好きなんだね、カメレオン君。
りえ:葉桜と桃色ってもっと離せなかったんでしょうか。まだも中途半端な感じ。
隆:カメレオンのあわてふためく姿が見えて来ます。葉桜とカメレオンのとりあわせが面白い。
知昭:そうか、葉桜は緑なのだ!!
健介:少々理屈っぽいところが惜しい感じです。
いちえ:なるほど。
帽子:理に落ちます。

くちづけの冷たし知恵の輪の絡み   大須賀S字

特選:けん太/選:あずさ 知昭 
けん太:今回、特選句に選びたい句が3つありました。この句には季語も、季節感もなく。一見、地味なのですが、現代詩に通じる世界があると思います。結構、表現も洗練されているのでは。くちづけと知恵の輪の取り合わせも効いている。
カズ:知恵の輪とはうまい。
知昭:くちづけの冷たさと知恵の輪の複雑さとが互いに比喩として機能しているところに魅かれました。
いちえ:知恵の輪が解けないとくちづけさせてもらえないのかなっと書きながら照れてしまった。
あずさ:難しい口づけをしてるのだね。
帽子:「くちびる」で十分ではないですか。それと、アナロジーだけで勝負されると読者としてつらい。

杏子ジャム明日別れを告げられる   宮崎斗士

選:たてほ 健介 またたぶ 柘仙 
たてほ:俳句らしい俳句だと思いました。これも季語の使い方がうまいと思います。ただちょっと、他の誰かの句と類想感を感じるのは私の気のせいでしょうか。
拓仙:明日がくるなって感じ。どうせなら別れを告げてやればいいのに。
健介:「杏ジャム」がやや唐突か?という感じもするが、第一印象がよかった。
いちえ:「杏子ジャム」をひらがなにしてみたら…でも…痛い!
帽子:まったく好みではないが、帽子には作れないじょうずな句だと正直思います。

手折りける梅の枝からヨーグルト   岡田秀則

特選:斗士/選:安伸 S字 
安伸:シュールですが、感覚的に分かりやすい句だと思います。
S字:梅の木の息づかいを感じる。
斗士:意外性が心地いい。新しい雅の誕生。
いちえ:植木鋏で切ったら牛乳が出てきたりして…。
帽子:「ける」がぶきっちょな感じ。

3点句

鐘朧 鏡に乳房押しあてる   内山いちえ

選:あかりや 柘仙 清広 
あかりや:<鐘>と<鏡><朧>に<乳房>見事な結構です。谷崎潤一郎の小説は未だに一度も読み通したことがないのですが、この句を読んで、谷崎潤一郎を読んだことにしておきます。
清広:いわゆる「女のナルシズム俳句」。最近、女性が強くなったせいか、こういうナルシズム俳句が多い。そんなに新鮮な「ナルシズム」ではないが、まあまあである。
拓仙:おちちが好きなもので
隆:エロティシズムがあります。
健介:この場合やはりマジックミラーがナイスですね。
いちえ:これは駄目だー。思わず見栄を張ってしまった。こんなに無いん「だっちゅうの!」
帽子:(1)図式的ナルシシズム。(2)「桜闇」の句と同じく意味不明の一字アキ。(1)+(2)=『くれなゐ』青玄Remix。

銀玉鉄砲弾(たま)切れの春の風邪   白井健介

特選:やんま 選:一之 
やんま:それでは戸を開けて、三毛を出してやりましょう。
一之:「銀玉鉄砲」がなつかしい。微笑ましい句。
いちえ:玉・弾とたまが続いたけれど銀玉で良かったということ。
帽子:古風な叙情。好みではないから選に入れなかったが、力のある人だと思う。

蒼天にあり<FAX>の回遊魚   神山 姫余

選:秋 安伸 またたぶ 
安伸:「<FAX>の回遊魚」がひらひらと目に浮かぶようです。
秋:<FAX>を回遊魚という例えもいいしそれが蒼天にあるというのがいいです。

ゆく春をジュゴンの背でひとみしり   南菜風

特選:秋/選:安伸 
安伸:「ひとみしり」がなかなか屈折していてかわいいです。
りえ:わかるわー。不安な時期ですものね。ジュゴンの背中ってすがり甲斐がありそう。背中じゃだめだったんでしょうか?
秋:やわらかな春の気分がとても良く出ていて、句として新鮮に感じました。この感性に引かれました。
健介:“ひとみしりするジュゴンの背”って面白いと思うんですが…。
帽子:『ぼのぼの』みたい。背は「せな」と読むのでしょう。

靴音に拗音のある春廊下   足立隆

選:はにわ(ToT) ゆかり たてほ 
はにわ(ToT):くゎぐゎくゑぐゑと蝶の標本
たてほ:古い田舎の木造校舎を一瞬想像しましたが、別の視点から考えてみると、新しい都会の学校とも取れるような気がします。前者はもちろん痛んだ木の床の軋む音、後者は真新しい床に、これまた真新しい上履きのゴムの部分を「キュッキュッ」と鳴らして歩いて行く新入生、といったところです。
ゆかり:「きゅっきゅっ」と鳴るのでしょうか。「拗音」で幼さをイメージしました。真新しい上履きで学校の廊下を歩いている新入生を連想しました。らして歩いて行く新入生、といったところです。
知昭:楽しさあふれる句。
帽子:「春廊下」って、ちょっとムリヤリじゃない?

青白き語彙もて島の蝶に聞く   あかりや

選:ゆかり やんま 南菜風 
やんま:で、蝶は何と言ってますか。
ゆかり:島の蝶というと、サイケででかい蝶という感じがします。それに青白い語彙というと、都会の貧弱な語彙という感じがします。そういえば蝶って「耳」という感じもしますね。
南菜風:「青白き語彙」の硬質感と、「島の蝶」という歌謡調?の言い回しのとりあわせが、おもしろいです。
知昭:覚えたばかりの単語で外人に道を聞くようなもの、とは違うんでしょうね、きっと。
健介:「青白き語彙」の曖昧さが詩語として今一つこなれていない印象です.
帽子:青白き語彙ってかなり生硬じゃないですか。

夢精せし目覚めや躑躅真つ盛り   白井健介

選:ゆかり 雄鬼 清広 
ゆかり:満開の躑躅は目覚めという感じがしますね。躑躅の花の形が放出という感じなので、はまります。
清広:男にしかわからない句だろう。夢精した後の、あのけだるい気分が、まあまあ出ていると思う。
雄鬼:白くなってしまった主人公を襲う躑躅の深紅。何に向かって射精をしてしまったのか。
カズ:生きているということはいいですね。
いちえ:お若いですなー。それにしても、「バラ」でなくて「つつじ」で良かった。
帽子:こういういかにも図式的な「青春」ぽさは、青臭さを演出する老獪さ。実年齢が若くても精神は老いている感じです。これが90歳の老俳人の最近の実体験というならそれはそれでめでたい話ですが。

油絵に向かってゆける蟻の列   大石雄鬼

選:あかりや たてほ 秀則 
あかりや:列を組んで次々に海に飛び込み自殺をする<レミング>を連想しました。
たてほ:さっと読み過ごしてしまいそうな一句ですが、よく見ると、なかなかに俳味のあって面白い句だと思いました。やはり、素材の取り合わせの妙でしょうか。
カズ:砂糖の絵でも。
いちえ:なんかあちこち痒くなるかんじ。
帽子:そんなことあるのだろうかと疑いはじめたとたんいい句に見えてきた。

UFOが生活の糧鍵に錆   岡村知昭

選:安伸 斗士 秀則/逆選:健介 
安伸:上五中七のナンセンスさが良いです。「鍵に錆」も巧みです。
隆:UFOで儲ける人はいるようですが、賛成できません。
斗士:「鍵に錆」に実感がこもる。
健介:「鍵に錆」でなんとなく“ガゼッタ・岡”のアパートを思い出します。下五に上手く季語を付けていただければ特選候補の句なんですけど…でもまあ「鍵に錆」のままだとするとやっぱり逆選かな…。
いちえ:鍵がが錆ついてちゃって「UFO」に乗れなくなったというお話し。
帽子:いいですねこれも。これ読んでみんな矢追さんのことを思い出したのでは。

2点句

またたびと三度唱える春の宵   木村ゆかり

選:あずさ 帽子 
いちえ:ニャーオー、ゴロゴロ、ゴロッニャーゴォ〜。
帽子:春宵の不可解な儀式。「三度」はさんどかみたびか。後者だったら韻を踏んでるけど、前者の方がくどくなくていい。
あずさ:またたび、またたび、またたび。

裂き烏賊の力の失せし花曇   大石雄鬼

選:あかりや あずさ 
あかりや:実は私も<鱈裂くや小笠原流花曇り>と言うのを作っていたのでした。吃驚しました。
帽子:さきいかって漢字にするとすごい迫力。
あずさ:力がある程度失せないと堅くて噛めない。

ここはかつて寮あり今日の花吹雪   足立隆

選:けん太 斗士 
けん太:理屈ぬきで好きです。ビジュアルと気持ちが素直に伝わってきます。
斗士:準特選。老いた寮生たちの集いの景が見える。
いちえ:「寮」より「研究室」とか「実験室」の方が深味が出るのではと思うのですが。
帽子:たとえば旧制高校の寮(当然男の園)のホモっぽい同期の桜?ソレはともかく最初の字余りの重ったるさも「かつて」と「今日」との対比のくどさも、かえって余裕のようなものに転じている。ふつう「ここは」なら「寮なり」、「寮あり」なら「ここに」となるはずだが、「ここはかつて寮あり」というやや口語に近い構文もリラックス感漂う。

夕暮れの街に記憶を奪われる   たてほ

選:やんま いちえ 
やんま:確か朝には禁酒したと思うんだが、、、
いちえ:この感覚、素晴らしいです。
帽子:B-Gram系の安い歌(作曲・織田哲郎)みたい。こうなると七五調って下品。

本閉じる蝶真っ逆さまに落ちてゆく   大須賀S字

選:ゆかり 秋 
ゆかり:本を閉じるとき、そんな感じがするかもしれないと思いました。
秋:読後感を蝶真っ逆さまというのが面白かった。
隆:こういうのってよくありませんか。ユニークなようで平凡です。
帽子:「閉じる」で切れてると思うけど自信がありません。

かりそめに春と名付けし犬行けり   あかりや

特選:隆 
隆:行けりは逝けりと読みたい。ほんの短い間面倒を見た犬への愛情を感じます。すべてのつきあいはこういう一期一会と思い人にも物にも対したい。
健介:「行けり」だとつまらない感じ。“こける”とかの方が犬らしいのでは?
帽子:「行けり」以外の部分が好き。

桜闇 遊体となる白い種子   神山 姫余

選:S字 一之 
一之:中七下五のポエジーは素晴らしいが、季語の「桜闇」が付き過ぎ。「春の闇」で良い。
S字:幽玄。花かがりの見えるよう。
帽子:ちょと思わせぶりかも。

新樹光クレアが髪を切っている   南菜風

選:斗士 健介 
斗士:ポートレートとして秀逸。
健介:「クレア」といえば、私に思い浮かぶのは“ガラスのクレア”の他にはいません。その切った髪が欲しいよな〜。
いちえ:OH! NO! クレア! 良くわからないけど、一応クレア〜!
帽子:字義はわかるがどういう反応を求められているのかわかりません。困ってほしいのかも。
りえ:クレアって誰?

風白し菫にこころ確かめて   大須賀S字

選:ともみ やんま 
ともみ:恋、なんでしょうね。きっと。ちょっと菫のイメージに甘えすぎだけど、でも、作者の実感なのでしょう。
やんま:今は、菫ちゃんの心だけが頼りなんですね。
いちえ:「風白し」はもう少し練った方がいいと思う。
帽子:冗談にしても笑えないし、どこまで本気なのか判断に困りました。

鳴くことに疲れたらしく毛虫になる   山之内拓仙

選:雄鬼 いちえ 
雄鬼:毛虫の前世は何であったのか。もう外に向かってわめくことをあきらめてしまった何者かは作者であろうか。
隆:毛虫に逆もどりするというのが少し疑問でした。
いちえ:じわじわと攻めてくるおかしみ。
帽子:ちょっとおもしろい。この「らしく」は成功しているように思われます。

国分寺跡に巣箱の縛られし   大石雄鬼

選:知昭 帽子 
知昭:何げなくある句ですけど、「国分寺跡」と「巣箱」の響きがうまく組み合わさっています。
健介:敢えて「縛られし」と言った意図は?
いちえ:国分寺跡の桜は見事だった。
帽子:こういう持っていきかたは自分にはできない。ちょっとまねしてみたい。

ぐちゃぐちゃの頭を菊に埋めるなり   中村 安伸

選:S字 柘仙 
拓仙:しなくちゃいけないことが沢山あって頭がぐちゃぐちゃになってしまう。菊の花に埋めたらすっきりするんじゃないかい。
隆:よほどひどい事故にあったのでしょうか?
S字:読むたびに、菊の香が満ちてくる。
帽子:「なりー」(キテレツ)と読んでしまった。この頭は自分のか他人のか。ぐちゃぐちゃとは中身か髪型か、それとも割れて脳が飛び散っているのか。十とおりの読みかたを楽しんだ。

それぞれのノイズに籠り月おぼろ   またたぶ

選:隆 知昭 
隆:ヘッドフォンで聴いている方は音楽なのですが、はたからはノイズでしかない。そういういらだちを朧月というものでやわらげている、その技術はうまい。
知昭:「ノイズに籠り」がいい。いろんな意味や解釈を楽しめる句ですけど、それをやりだすときりがないです.それだけいい句だということです。

天然水嫌いの桜並木かな   岡村知昭

選:やんま 南菜風 
はにわ(ToT):ダイオキシンも番茶も出花
やんま:では、何を飲むか。ビールに違いなし。
南菜風:桜にも水の好き嫌いはあるんだろうな。
隆:「頂上で真水に還る山桜(寺尾敏子)という句があります。
いちえ:「桃の天然水」が飲みたーい。
帽子:擬人化っぽい表現というものは退屈なものですが、この句は好み。

ウドがうまい寒さが消える   カズ高橋

特選:柘仙 
拓仙:すっきりとした言い切りがよい。ウドのうまさが寒さが消えるによってより強調されていると思う。
知昭:それは何より美味は心を暖めるってことですか?
帽子:「入れものが無い手で受ける 尾崎放哉」の2コーラス目か。構文をサンプリングするなら、もっとバカバカしい内容を盛ったのも読みたいです。

太古より波涛押し寄すばかりなり   やんま

特選:一之 
隆:当然、こういう発見はすでにあるのでは…。
一之:これぞ「不易」のイメージ。無季だからこそ成功した。(来年の7月に人類がほろぶと云う、ノストラダムスの予言を連想した)
いちえ:うっ美しすぎる。
帽子:怒涛って言葉、まじめに使えば使うほど作者の思惑を離れて「兄弟船」に近づきます。「ばかり」につなげるときは、程度をあらわすなら終止形だけど限定をあらわすなら連体形。意味あいからしてこの句は後者みたいだから文法的には「寄する」。「涛(なみ)押し寄するばかりなり」でいいのでは。

葉桜や女子高校のキスごっこ   峠谷清広

選:けん太 斗士 逆選:帽子 
はにわ(ToT):二浅三深目も潤みだす
けん太:こんな他愛なさって許せる・・・。「女子高校」を「女子高生」と読んだのですが。どうなんでしょう。
隆:いいムードです。映画「桜の園」を思い出しました。
知昭:これ作ったのは男性だね。女性は男子高校のキスがっごを句にするのでしょうか。
斗士:「葉桜」が効いている。「ごっこ」不要かも。
健介:“ごっこ”でキスするのは禁止!
いちえ:女子校を甘くみてはいけない。
帽子:レトロな吉屋信子路線を狙うならはっきりそれを打ち出したほうがいいのでは。逆にこれが普遍もしくは現在だと思って作ったのなら、作者の年齢性別にかかわらず過大なオヤジ的錯覚と言わざるをえません。

高速道の金雀枝 車ブリキ化する   村井秋

選:たてほ カズ 逆選:知昭 
たてほ:非常に詩的な句。特選候補でした。こういう句が、個人的には好きです。 高速道に鮮やかな金雀枝の取り合わせ、そして車がブリキ化する。メルヘンチックな句とも取れるし、ちょっと恐い句とも取れます。これは私の勝手な思い込みですが、ギリシャ神話の中に出てくる、船人を美しい声で惑わし、船を難破、遭難させてしまう怪物、「セイレーン」ともイメージが重なりました。
カズ:金雀枝をうまく使っているな。(ブリキ化)
知昭:言葉はすごく面白いんです。だからこの二つの言葉が組み合わさったとき、言葉とは裏腹に世界の広がりが少ないと思わすにいられないのです。
帽子:そうかこれも初夏だ、とブリキのおもちゃ博物館の北原館長も納得の一句。けっこう好きだし絵も見える。

行く春を若い娘とあれこれそれ   峠谷清広

選:けん太 安伸/逆選:あかりや 逆選:ゆかり 
安伸:「若い」にちょっと難ありですが、「あれこれそれ」が良いです。
ゆかり:「あれこれそれ」は手抜きなのでは。「若い娘と」とくると、嫌でも卑猥な方面へ行ってしまうような気がします。
けん太:いいなあ。想像してしまいます。ウン。
あかりや:若い未婚の女のことを<娘>というのではないでしょうか。
りえ:若い娘って何歳ぐらいですか?ちなみに私は24。
知昭:どれどれどれ?
健介:「若い娘と」な〜んて超オヤジだっちゅ〜の!でもいいなぁ〜“あれこれそれ”。
帽子:どれ?

1点句

クレバスの朧に眠るマストドン   一之

選:S字 
S字:花氷の美しさ。
健介:しりとりで戯作を一句<マストドンドテチンマンモーゴン春眠>失礼しました〜。
いちえ:「マストドン」は絶滅したゾウの一群のことだと辞書に書いてあった。だから「クレパス」が出てくるのだと思うんだけど「氷河」じゃ駄目なのかしら。「クレパス」はちょっと官能的。
帽子:大型古代生物ってだけで感動する人が世の中にいることは知ってます。ロマンみたいなものを共有できさえすれば「眠る」の甘さを許せたのでしょうが。

おるがんに包帯ほどかれた下腹   またたぶ

選:雄鬼 
雄鬼:オルガンが隠し持っている傷が、下腹部の傷のようでもある。傷は治っているようでもあり、永遠に残るようでもある。オルガンの鍵盤が包帯のようでもある。
帽子:オルガンを平仮名書きにする必然性って?

春雷に臍下三寸梅の種    はにわ(ToT)

選:カズ 
はにわ(ToT):( 自解)片手収納リーズナブルさ
隆:やはり品がないです。こういうのは難しいのでしょうネ。
カズ:梅の種とはおもしろい。
健介:「臍下三寸」って?「梅の種」って?
帽子:「に」でいいのかなあ。

薔薇園で死ねたらが口癖でした   千野帽子

選:健介 
はにわ(ToT):悪しき性癖菊園を犯る
りえ:「キャンディ、この薔薇をきみに」ってそれはアンソニーだっつの。まっさきに思い出してしまった。
隆:西行は桜でしたが。
健介:黙祷…。
いちえ:hide死んじゃった。超かなしい。(by元「X-Japan」のファンより)

生き霊に足をからめる朝ぼらけ   山口あずさ

選:知昭 
知昭:いい意味でのエロティックさを感じます。また「朝ぼらけ」をよくぞ使ってくれたと言いたいです。
帽子:『聊斎志異』とかゴーティエの「死霊の恋」とかの線を志しつつ『GS 美神』あたりで落ちついてしまった感じ。

桜時みんな孔雀を隠せない   宮崎斗士

選:はにわ(ToT) 
はにわ(ToT):濡れた下着と突っ張りズボン
りえ:そんな立派なモノは隠しておきなさい。しかし生物のオスの求愛は涙ぐましい物が多い。男って大変やね。
帽子:結局季語の無難な説明になってしまった感じ。

ゆるやかに奈落に通ず桃の上   またたぶ

選:けん太 
けん太:「桃の上」をどうとっていいのか。曖昧さは残りますが。
りえ:エッチな想像をしたのは私だけではないはずだ。桃はつきずぎの気もするがはまっている。
帽子:「奈落」と「上」との矛盾を狙ったのかもしれませんが、「桃の上」がいかにも説明。それから「桃」なら実で秋、桃の花なら春です。句の字づらでは実。でも投句は4月。でも今回菊の句もある。でも絵づらとしては花咲く桃のほうがわかりやすい。でも桃の実は『古事記』の冥界の挿話(黄泉比良坂)に出てくる。でも奈落は仏教起源。この句はどっちかな。それとも奈落って舞台用語の?

でで虫がうじやうじや三つ星レストラン   一之

選:健介 
隆:そのとうり、ですがちょっと悪趣味。
健介:エスカルゴというのは生きたまま仕入れるのか実際のところは知らないのですが、三つ星レストランの舞台裏(=厨房)を垣間見る感じでとても好きな一句。
いちえ:このレストラン、行きたくない。
帽子:エスカルゴのこと?だったら別に高級食材でもないからミシュラン三つ星級の店って印象はありません。もちろん三つ星で食べたらふつうのよりはおいしいのでしょうが、貧乏なので行ったことないです。
あずさ:そういえば、帽子さんはフランス帰りでしたっけ。日本ではエスカルゴはかなり高級だと思われてると思う。もっともわたしも、叔父に子供の頃かたつむりに醤油をかけて食ったことがあると言われて、エスカルゴのイメージがぐちゃぐちゃになりましたが。。。
りえ:三ツ星にでで虫はちょっと嫌です。

爛々と体外受精せり四月   木村ゆかり

選:一之 
一之:「爛々」がすごい。しかし季語が邪魔。いっそのこと無季にして《爛々と体外受精いたしけり》ではどうか。
健介:「爛々と」がいまいちピントこなかった。「爛々と精子を択ぶ」という感じなのかな?
いちえ:体外受精とな。精子くんを詠った句が何句かあるけれども、やっぱり春だから?「イヤ〜ン、まいっちんぐ」ってちょっと古い。
帽子:「精子不明」「夢精せし目覚めや躑躅真つ盛り」とともに今回精子三部作を構成している。こうなると「桜闇 幽体となる白い種子」までそっちのほうで読めてしまう。それもこれもたぶん春のせい。

四月ストップウオッチ雨に流れて候   村井秋

選:たてほ 
たてほ:陸上の練習風景が浮かびましたが、本当のところはどうなんでしょうか? 鮮やかなイメージが画像となって脳裏に浮かんできたので、感覚で撰びました。
知昭:大変でおじゃるの。
帽子:しゃきしゃきしててけっこう好き。
さまよいて魁夷の森の木々となる   たてほ
選:隆 
隆:木々と複数にするより「木となりぬ」くらいがよいのでは?
帽子:東山魁夷の描く森はメルヘンしててキライ。

精子不明   カズ高橋

選:いちえ/逆選:ともみ/柘仙 
はにわ(ToT):大子宮・・・ はにわ(ToT)
ともみ:短さで惹きつけるだけのインパクトはない。いいとこ内輪ウケ。
拓仙:22世紀の俳句か?
隆:論外。
一之:面白いが、永六輔提唱の「創句」のたぐいだろう。断じて俳句ではない。
知昭:徹底的に言葉を切り詰めて句を作るときは、完成した句そのものが意味であり、現実でなければと思っていますが、この句は切りつめた割にふくらみは少なく、余分な意味が多いような…
健介:一回こっきりのアイデアとしては取りあえず面白い。二回目はウケないかも知れませんが…。
いちえ:性別不詳とつなげてみたくなる。でもこの短さが絶妙。
帽子:永六輔の『一言絶句』か、懐かしの『ビックリハウス』ご教訓カレンダー。
あずさ:卵子の本懐。ボキャブラ俳句?

色紙の金箔と白紙どちらが表か教えて下さい   工藤安之助

選:いちえ/逆選:隆 逆選:一之  
いちえ:同感!私も知りたい。
ゆかり:たいへん難しい問題だと思います。
カズ:ぼくもわからないのです。
隆:確かに表裏の分からぬものですが、分かったからといって、どうなるものでもないでしょう。
知昭:あなたが表と思った方が表と答えて、作者の術中にはまった私はようやく逃げ出すことができました。
帽子:「そうか白も色のうちだよね」って考えてくれるほど親切な読者ばかりじゃない。その可能性をいちおう考えたあとで、それってつまんない解釈だと思う読者だっています。「色紙」と呼ぶこと自体、発話者にとってどちらが表か自明だという証し。カマトトするなら底が割れないように細部までやり通してほしい。
一之:どうしてこれが俳句なのか教えてください。
あずさ:金箔が表です。

その他の句

痛ましき筋肉はずませ夏は来る   内山いちえ

知昭:夏は筋肉が輝く季節。しかしそれゆえの悲しみのまたあるんでしょうか。はずむ筋肉は何を教えてくれるのでしょうか。
いちえ自解:♪♪やめろっと言われてもー♪♪歌ってごまかす。
帽子:三島ふう観念性がちょっと苦手。

またぞろに中流の雨四月尽   あかりや

帽子:語感にちょっと抵抗感じました。

豆の花涎垂らせば死に近づく   山之内拓仙

帽子:勝手なこと言ってる。でも何回も読んでいると納得できる気もしてくるから不思議。

花の雨牛丼が過不足なし   村井秋

カズ:しょうがをいっぱい入れて食べるのが好きです。
帽子:好きな世界。いい感じなだけに字足らずがもったいない。
まさに春アイバンクもうがらんどう   岡村知昭
帽子:「まさに春」という言い方は勝負に出てますね。そのあとがこれていいのかちょっとわかりませんが。
りえ:取るか最後まで迷いました。

謎のごとクレマチス咲くまひるまに   久蔦ともみ

帽子:「咲く」で切れているのか平句なのか。たぶん前者。上五が押しつけがましいかも。

電流の伝わる握手椿落つ   岡田秀則

りえ:ありましたねー、昔はこんな感覚が。ま、若いうちだけなんだけどね、こういうの。(強がり含有)
健介:こんな握手、憧れちゃいます。「椿落つ」の意図がやや不明。
いちえ:恋の予感ですか?でも椿が落ちてしまってはねェ。うわっ思わず本音が…ジェラシーはほどほどにしとこ。
帽子:押せ押せ俳句なのにすんなり読める。好感。
あずさ:いますよね、静電気起こす奴って。

虎杖や背伸びをすれば挫折する   山之内拓仙

帽子:そんな身も蓋もない言いかたを。
あずさ:そりゃそうでしょ。大人になると背伸びしなくなるのよ。

花筵織るためにある老婆の手   山田実

知昭:対比が安易。ここから出発してみませんか。
いちえ:「ためにある」を工夫すると良くなる。
帽子:納得いかない断言。

平成衰へ一割の糖尿病   カズ高橋

隆:「昭和衰へ馬の音する夕かな」(三橋敏雄)を思い出しました。
知昭:昭和が衰えると夕方に馬の音がするのだけど、平成が衰えると一割の人が糖尿病なだけということか。あーあ、夢もロマンもないねえ。
帽子:後半は先日厚生省が出した報告書のこと?

風遊び君もカラスになりたかろ   やんま

いちえ:いいえ。
帽子:民謡調の措辞ってむずかしいですね。

脳細胞脱落すれば蝶生まる   木村ゆかり

はにわ(ToT):摩滅液状吸引1回
帽子:「脳細胞脱落」が観念的。新井千裕の『忘れ蝶のメモリー』(女の子の耳の奥にさなぎができてしまうというポリス・ヴィアンみたいな小説。羽化して耳の穴から蝶が出ていくとそれまでの記憶が全部なくなっちゃう奇病)のような身体性がほしい。

回転木馬まわり続けて九億年   たてほ

隆:九億年が分かりませんでした。
いちえ:♪♪まわるーまわるーよ 時代はまわるー♪♪
帽子:吉野屋は牛丼一筋八十年。いいと思う。

もの探すうりずんの午後鳩がなく   久蔦ともみ

いちえ:「午後」がおしい。
帽子:上五と下五が入れ替え可能。琉球語使ってもただごとはただごと。

春惜しむ細胞分裂は消えるため   内山いちえ

知昭:「人は死ぬために生きているのだ」なんて気取ってみたくなります。でもそれは本当のことかも…
いちえ自解:とてつもなくハズカシイ。消えて下さい。この俳句。
帽子:納得いかない断言。

いまごろはヘリウム風船どこの空   久蔦ともみ

健介:「ヘリウム風船」を最初に持ってきたい感じも…。
いちえ:そういえば、「風船おじさん」てどこ行っちゃったのかな?
帽子:おーいお茶というか、だまされやすい国語の先生の受けを狙った小学生って感じ。

春の空白 火を入れ大海をつまびく   神山姫余

ゆかり:「春の空白」が好きです。

舞姫や深紫の蝶の壷を持ち   はにわ(ToT)

はにわ(ToT):( 自解)みつめられるとあふれてきちゃう
隆:俳句歴30年以上のベテランの句集にありそうな、とても上手な句です。
帽子:深紫は「しんし」って読むの?それとも字余り?

朧夜の小判数える悪代官   峠谷清広

逆選:S字 
隆:TVドラマか昔の時代劇、よく分かりますが、もうひとつひねりが欲しい。
S字:貧相。冒険すべき。
いちえ:「あーれー、お代官さまー」
りえ:ちょっと。面白いけどね。
帽子:これからプリンプリン(時代劇ものを得意とするキャブラー)のネタがはじまる感じで楽しい。俳句はじめたころ袋廻しで「計」という題が廻ってきて困って中七下五を「悪代官は田口計」とやった記憶がある。

半魚人咽喉に蝌蚪を飼うており   はにわ(ToT)

逆選:あずさ 
あずさ:口のなかが気持ちわるくなったわたしは半魚人?
はにわ(ToT):( 自解)後悔の汗粘つく緑
いちえ:ふーん。でも半魚人よりも半魚どん(この書き方で良かったかしら)の方が個人的には好き。
帽子:「あまぞんのとても内気な半魚人 倉阪鬼一郎」「ばけものと言われて驚く半魚人 同」を思いだした「咽喉」「蝌蚪」を音読みしていいか訓よみしていいかよくわかりいませんでした。

万愚節ダディ買うやつみてみたい   山口あずさ

逆選:はにわ(ToT) カズ 
はにわ(ToT):四月馬鹿言う瓢箪ありて
ゆかり:ははははは。
いちえ:私も。あと、M.ジャクソンと似た振り付けは止めてほしい (by. M.ジャクソンのファンより)
隆:そのとうり、買う奴がいるから、こういうものがのさばるのです。
カズ:万愚節が?
あずさ:四月馬鹿っす。付き過ぎだけが取り柄の俳句です。
帽子:店頭でぱらぱらめくるぐらいはしました。今回の投句者で買った人ひとりくらいいないかな。
りえ:ちょっと。面白いけどね。
知昭:アタシャこの句を書いたお方の顔が見たいね。
あずさ:(^。^)←こんな顔!