第8回 青山俳句工場向上句会選句結果

(長文注意!)

今回はなんと90句。選句がたいへんとの声もちらほら。前回もお知らせしましたが、第10回より(11月25日〆切分)より、一人2句出しとします。また12月は第2回超特選大会ですので、投句は一回お休みとなります。
それにしても、今回は良かった、今回は今一つなどの感想が人によってまちまちなのが、青山俳句工場向上句会の特徴のような気がしてきました。まっすぐなたった一つの道ではなく、放射状に幅広く発展向上いたしましょうね。あと、それから、自分の句に点を入れないようにしてくださいね。入れてもカウントしません。選挙じゃないので、ここらへんの「美意識」はどうか厳守してください。あ、そうそう、工場長はついにインターネットをはじめました。HP上の工場長日誌が好評です。郵送投句の方もインターネットカフェで見てみてね。

向上句会とりまとめ:山口あずさ


投句:岡村知昭、桑原伸、足立隆、大須賀S字、一之、さとうりえ、にゃんまげ、肝酔、恵 来庵、鯨酔、松山けん太、石津優司、船外、鉄守一彗、林かんこ、北山建穂、二上キフウ(以上2名、俳諧新月座)、大石雄鬼、田島健一(以上2名、豆の木)、あかりや、はにわ(ToT) 、またたぶ、山本一郎、満月(以上、5名NIFTY FHAIKU)、宮崎斗士、神山姫余、青嶋ひろの、千野 帽子、中村安伸、白井健介、山口あずさ(以上7名、青山俳句工場)

選句協力:赤城英雄、城名景琳



全体的な感想

知昭:皆さんどうして句の世界が広いんだろうと思うことしきりです。

優司:こんな楽しいページがあっただなんて!3度のメシと同じくらい(?)俳句大好きです。向上できるかどうか分かりませんが、宮崎工場長並びに工員(?)のみなさま、よろしく!<社外工>

船外:メンバーになられた千野帽子さん、ますます冴えてください。

一郎:月は、昼の月、月光、朝の月、無月、厭な月、のぼる月、熟るる月、なんとまあ月の句の多いこと。かく言う私は「朝の月」。前回は3句で1点だったので、今回は6点が目標。

けん太:わたしはいま大スランプに陥っています。脱出するために、とにかく下手でもいいから一日一句をとがんばろうとするのですが・・。こんなわたしですから、今回はとくに、見逃したものが多いのではと。みなさんの講評を読ませていただいて勉強します。よろしくお願いします。

りえ:ひとのことは言えないが、今回は特に超初心者かと思われる作品が多かったような気がする。分かち書き、季重なり、字余りの多用。もっと練ってもいいんじゃない?というのが全体的な感想だ。

帽子:毎回全句にコメントしていたのですが、今月はスケジュールの事情で1句しかコメントできませんでした。ごめんなさい。みなさん愛してます。

景琳:夏でもなく秋でもなくの季節が、全体に感じられました。 

建穂:今回は時間がなく、変な句しか出せませんでした。次回は頑張らねば……

健一:前回とは対象的に今回はいい句が多かったですね。ただ、微妙に欠点があって取れなかった句も多かったです。私も含めて、推敲が足りないのでは?

またたぶ:結果を見る度に自分の不振に落ち込んでいましたが、今回からはきよほーへんはおいといて、ずぶとく楽しみたいですね。

にゃんまげ:はじめて参加しました。作品が多いので選ぶのが難しかったです。


9点句

秋霖に座ってゐたる麒麟かな   一之

特選:健介 健一 鯨酔 一彗 一郎 けん太 あずさ 雄鬼 

健介:“動物園の動物”というものに対して感傷的になるなどの、ありがちな心情を決して交えることなく、冷めた眼差しで淡々と描いているからこそ却って読み手に複雑な思いを抱かせるのである。何でもないような顔をしていて実は深みがあるのが好い。「秋霖」がたいへん巧く効いている。特選です。
一郎:情景の不思議さに1票入れました。「もののけ姫」を思い出した。
けん太:これも特選候補でした。これはただの写生なのでしょうか。何か企みがありそうで、それが見破れなかった。読む方の責任かもしれません。すみません。
鯨酔:謹呈 キリンビール社長殿。天駆けぬ蹲る麒麟の虚ろな目に光る涙。寂寥の一景。いざ立てよ麒麟!霖と麟の韻律もなかなかのもの。何麒麟の背中に朝日が射していいるって・・・・。
りえ:静か。いい絵かも。
あずさ:秋の長雨、秋色の麒麟。
英雄(選):古典的には、少し色づいた柞の疎林あたりにうずくまった姿が想像されなくもないけれど、”座っていたる”とある以上、どこかとんでもない場所に脚でも組んで座っていたのでしょうか。
一彗:南画のなかに麒麟がまぼろしのようにいるようで、気品のある佳句。
雄鬼:秋霖の中に突っ込んだ麒麟の首が見えてきた。首の下の島のような胴体の黄色に黒の斑が、秋霖に映えて美しかった。
健一:特選にしようか迷いました。いい句ですね。
満月:風邪ひかないうちにはやくおうちにはいんなさい。もう許してあげるから、ほら。

俺と居てほろりとにがき鈴木かな    あかりや

特選:斗士 船外 肝酔 安伸 りえ ひろの 隆 帽子 逆選:伸 

あずさ:鈴木、これが苦いんだよね。
伸:鈴木さんの顔を想像して、つい笑っちゃったので、あえて逆選。
隆:鈴木でも佐藤でもと思われるでしょうが、これは鈴木で決まりです。
斗士:俳句読んで、こんなに大爆笑したのは初めてだった。かな止めが本当にすごくいいよねぇ。いやー、鈴木!
船外:鈴木さんは男、にがみばしった男前よりは、哀愁を感じさせる。
りえ:ビールのようなひとなのか?鈴木。
肝酔:自分といるとほろにがくなってしまう他人という言い方が面白い。無季の句ですが俳句的な滑稽味が出ていると思います。
満月:鈴木ってだれよ?!
安伸:攝津さんの「鈴木忌」に匹敵。
ひろの:パロディーと気づくまでに一瞬あった。単体として鑑賞してもおもしろいです。場末の喫茶店に長居する俺と鈴木くん……景も浮かびます。
<参考> をりとりてはらりとおもきすゝきかな  蛇笏

8点句

鰯雲いつも猫ゐた場所に花   白井健介

特選:肝酔 特選:かんこ 知昭 船外 けん太 優司 

伸:センチメンタルですね。猫好きの私にとってグサッとくる句です。
優司:「猫しんじゃった」の? そうじゃないですよねヽ(^o^)ノ。効いてますね…「鰯」。ニャン子の気まぐれさがよく出ている句です。
船外:月日もまた百代の過客、ある時は猫として、またある時は花としてやってくる。
けん太:美しい秋の雲と花。この花は自然に生えたものか、誰かが供えたものか。わたしは後者として選びましたが。
かんこ:いつもいつも見かけた野良ちゃんが、ぷっつり姿を消してしまったのでしょうか。鰯雲と猫と花。優しい素直な句ですね。とにかく猫には弱い私なので特選。
肝酔:季節の移り変わりは、俳句の典型的な題材ですが、それだけに作者がありもしない移り変わりを勝手に作り上げてしまうようなあざとい表現になりがちです。でもこの句は、季節の移り変わりとは言えないような些細な変化を季語の鰯雲と組み合わせることでリアリティーのある季節の変化を描いていると思います。
満月:猫が死んだということが見え過ぎる。すべての「不在」を含む表現が欲しかった。

7点句

柚子置いて泉鏡花をはじめます   宮崎斗士

特選:知昭 健一 けん太 キフウ あずさ 満月 

あずさ:柚子置いてぇ、泉鏡花、よーい、はじめっ。
知昭:こ、こわーい。でもいきなりの飛躍はすごく楽しいです。
伸:以前、斗士さんの句でバレリーナをはじめられる句がありましたが、今度は泉鏡花をはじめられる方が。
けん太:柚子と泉鏡花。はっきりした取り合わせが潔くて、とても好感が持てます。
りえ:これはどうも。どうぞご自由に。
キフウ:ただの固有名詞の喚起力だが、はじめますが、好いフレーズ。
健一:「泉鏡花をはじめます」が面白いですね。大学の授業かなと思いました。「置いて」が気になりましたが。
満月:柚子と泉鏡花がこんなに合うなんて。こんな粋な先生に出会った人は文学好きになれそう。なんだかロイド眼鏡をかけていそうな。。

6点句

あんぱんかもしれない鶴の断面よ   中村安伸

特選:帽子 一彗 ひろの キフウ 雄鬼 

りえ:鶴の断面ってやっぱり首ですか?
一彗:この断定的ニュアンスで言い切ると鶴もびっくり、おもしろいところを狙っているのがわかるのは「あんぱん」をもってきたからかも。
雄鬼:こういう句は直感で採るしかない。鶴の中があんぱん。大胆だけど、突飛ではないような気がする。なんとなく。。。
キフウ:こんなのと思いながら、採っちゃう句。
ひろの:山鳩よ、とか人妻よ、とかもいいけど、「断面よ」はなかなかいえないよなあ。
あずさ:よくわからないがファニー。

アメリカの国旗にアイロンの形   山口あずさ

特選:安伸 斗士 はにわ(ToT) 雄鬼 帽子 

斗士:時事俳句と受け取った。「アイロンの形」が、なんとも絶妙。これも思わず笑っちゃったよ。
雄鬼:アイロンの三角のちょっとした筋がアメリカの国旗に残っていたと解釈した。国旗の模様のことではないであろう。面白い。
またたぶ:なにか琴線に訴えてくるんですが。もう一歩。
はにわ:アイロンの形かぁ。葉巻やったら。。 しかし お手軽やったんやろうね ルイチャン
安伸:くっきりとした輪郭、正当派の皮肉がある。

シーソーの取っ手冷たき秋の暮れ   さとうりえ

隆 船外 伸 建穂 健一 恵 

伸:あたり前と言われれば、そうなんでしょうけど、なんとなくひかれる句です。
健介:「冷たき」が冬の季語なので「秋の」が不要に思えてきてしまう。どちらかを削り、秋の句とするか冬の句として作るか、一考を要するところです。
船外:取っ手に触れている人の心の寒さが伝わってくる。
恵:思いもかげず冷たかったのできっとドキっとしたことでしょう。
建穂:誰もいなくなった秋の夕方の公園。その寂しい情景がよく浮かびあがってくる。
健一:秋の暮れがちょっとついてますね。もっといい季語があると思いますが、いい句だと思いました。

足の指で一期一会を練習す   あかりや

特選:あずさ 知昭 肝酔 はにわ(ToT) S字 

あずさ:わたしもいつも練習してるんです。
知昭:目指せ雪舟ですか。「一期一会」という語の重さに一句が打ち勝ってます。
S字:面白くて、何だか悲しい。
りえ:どうやるのか、まじめに考えてしまった。
英雄(選):一期一会→茶会→正座→白足袋→重ねた足(とくに第1)指、と連想す。(それ)で練習すというと、これは冗談句のひとつか。
肝酔:作者の不器用さ、ひたむきさがにじみ出ていて微笑ましい句です。
はにわ:σ(・_・)足の指でチョキつくれますって、関係ないか (^^;;
満月:え、っと、つまり、どんな練習??

5点句

体内に蜘蛛あり水を求めけり   大須賀S字

特選:りえ 知昭 鯨酔 満月 

伸:パラサイト・イヴの蜘蛛版。
鯨酔:これぞ共生。水を求める蜘蛛が泣かせるぜ。でも、そのうち酒持ってこいのと要求がエスカレートしたりして。「共生と言うは易きぞ威銃」
りえ:「体内に蜘蛛がある」と言いきり、なおかつ水を求めているという、ふたつの嘘の具合が好きだ。
満月:蜘蛛が水をごくごく飲む様は浮かばない。水玉をひとつ抱えて、つーっとそれが小さくなっていくのだ。が、その怪しげにゆっくりした動きや突然すばやく獲物を捕る動作から、自身の内なるものに虚をつかれる不安を思う。すると渇きが伝わってくる。

祖父を呼ぶように九月の深呼吸   宮崎斗士

特選:一郎 ひろの S字 満月 

S字:爽やかな風を感じる。
一郎:猛々しさが消え、ちょっと優しくなった9月、葉の青さにもかげりが見えるそんな日の朝だからこそ、祖父が思い出されたのでしょう。
りえ:おじいちゃーん、て?
満月:のびやかで、大きな時間に戻ってゆける。「祖父」が単なる措辞としての祖父でなく、明らかに呼ばれうるある感覚の対象を示している。秀逸。
ひろの:もうおじいさんを呼べない人なのかもしれない。親族名称の使い方がじょうず。

指相撲には椋鳥が住んでいる   宮崎斗士

特選:雄鬼 特選:あかりや 満月 

あずさ:不思議な住まい。
隆:何故? 椋鳥が棲んでいるのか? 分からん。
雄鬼:特選では選んでいるが、どう解釈していいかはよくわからない。指相撲の時の親指の動きに、椋鳥の太く早い動きが重なり合ったとしか言いようがない。よくわからないけど、直感で特選。
満月:隣の家が売られて庭がなくなってしまい、もう椋鳥が来なくなってしまった。でも指相撲をすればいいんだね、そうか!
あかりや:足とくちばしが黄色くて、全身灰褐色。漂鳥。きゅるきゅるりゃりゃあという鳴きかた。そういうものが確かに指相撲という狡さ、かなしさ、の中に住んでいる。腕相撲には住まない。

4点句

ひまわりの羽音が聞こえたかと思う   青嶋ひろの

特選:満月 にゃんまげ キフウ 

あずさ:ばっさばさ。
にゃんまげ:夏の暑さが音をたてて遠ざかる感じがすきです。
りえ:思うで収めたのは痛い。
キフウ:よくあるパターンだけれど、と思う。
またたぶ:せっっかく「ひまわりの羽音」なのに、「聞こえたかと思う」なんて後退しないでほしかった。
満月:こんな無作為のような句が好きだ。ふっとこぼれでたようで、しかし、「かと思う」と自身の違和感として「ひまわりの羽音」を位置付けた手法は、逆位相のスピーカーから出る音を聴くような、一種のめまい感を覚える。はっと息を呑んでふりあおいでしまう。

自動詞の自がさみしくてのぼる月   千野 帽子

姫余 恵 かんこ あずさ 

隆:こういう観念的なのは困ります。俳句に限らず作品は観念的であってはいけないでしょう。
あずさ:隆さん、なんでいけないのでしょう? 観念的という観念に囚われていらっしゃるような気がしないでもないですが?
恵:秋はさみしい月が似合いますね。
かんこ:独りのさみしさが伝わってきます。
姫余:読めば読むほど、さびしさが強く深く伝わってくる。こういう創り、好きです。

鬼やんま芯かたくして海へ向く   田島健一

雄鬼 一郎 またたぶ けん太 

一郎:オーソドックス、俳句の見本のような気がした。この鬼やんまは、海を渡る気なのか。
けん太:最後まで特選候補でした。「芯かたくして」がどうしてもわからない感覚でふみきれませんでした。ここの部分をどう取るのか、教えてください。
雄鬼:芯かたくしてがよい。海へ向いているのもよい。私には硬くなってしまった悲しみを感じる。
またたぶ:芯かたくして海へ向いているのは何だろうか。悩める人?それとも?

夜さり来て 月は化石になりたがる   北山建穂

特選:にゃんまげ 一郎 りえ 

一郎:特選にしようかと迷ったが、前回のトップ賞がやはり透明感のある月の句だったので、やめた。
にゃんまげ:絶滅した恐竜を思わせる一句。人類の命もあとわずか。
りえ:一字アキは不要なのでは。
満月:「月は化石になりたがる」はすごくイメージを喚起する表現。だが「夜さり」はどうにもここに合わない。字空けも不適切。

左眼を隠す左手昼の月   岡村知昭

隆 健一 鯨酔 あずさ 

あずさ:ひの頭韻。手のひらを通ってくる光の色は実に月の光の色に似ている。
伸:実際に同じことをやりました。視力検査になるのでしょうか。
隆:右手にすれば字足らずですが。
鯨酔:技巧派の作品。まさか、検眼じゃあないでしょうね。
英雄(特選):やや哲学的ないし宇宙(論)的な匂いがする。左手には黒い遮眼器(というかどうか知らないが)が握られているのであるかも知れない。
健一:だからなんなのといいたくなるけど、いいんじゃないですか。昼の月はちょっとついてますけれど。
満月:右目の検眼?さて、月はいくつ見えますか?

パレットに出過ぎた絵の具逢いたさは   またたぶ

斗士 恵 りえ あずさ 

あずさ:自分からはみ出してしまったような想いなのよね。
斗士:感情を持てあましている状況、うまく表出した。
りえ:ちょっと饒舌?
恵:絵の具の色はやっぱり赤でしょうか?

蚯蚓鳴く世界がアイラブユーと鳴く   肝酔

特選:ひろの 安伸 またたぶ 

伸:BGMはビートルズの愛こそすべて。
りえ: 鳴くの次がまた鳴くでは。
またたぶ:ア〜イ キャン ストップ フォーリン イン ラブ ウィズ ユ〜
安伸:「アイラブユー」のあっけらかんとした様子に好感。
ひろの:ほんとに鳴いてるのだろうか。すばらしい。

超LSIもう曼陀羅は目覚めたか   山本一郎

満月 またたぶ ひろの S字 

あずさ:アキラ的世界かな?
S字:不可思議な宇宙を想像する。
またたぶ:「超」とだけは言わないでほしかった。(多分「超LSI」というものが実在するんだろうけど。)でも「LSI」に「もう曼陀羅は目覚めたか」ですよ。これでも採らずにいられますか?
満月:IC〜LSI〜超LSIとなってゆくにつれて、だんだん人間の思考に近づいて来ているのだろうか。そうだとすると、近い将来、曼陀羅そのものの超LSIが生まれたとしても不思議はない。ロボット博士森正弘氏も20年以上前に「ロボット君が描いたお曼陀羅」なる図を書いている。「もう」はない方が世界が広がる。
ひろの:語感も言い回しも好きなんだけど、「超LSI」が曼陀羅を思い起こさせてしまうのはもったいないです。

詫び状の封印固き鬼胡桃   鯨酔

姫余 健一 恵 はにわ(ToT) 

あずさ:鬼胡桃っていかにも堅そう。したがって付きすぎ。
伸:固いのが封印なのか鬼胡桃なのか、わかりにくい。
健介:「固き」が「封印」と「鬼胡桃」の両方に係るかのように置かれているのがまずい。そもそも「鬼胡桃」を配した句の中に「固き」という形容詞をどこに置いたとしても上手くいくかどうかは厳しい。言わずもがなという感じになるので。例えば<詫び状の封印しかと鬼胡桃>としてもまだ付き過ぎの感じ。「鬼胡桃」でない方が宜いか?
恵:詫び状ではなく、別れの手紙が似合いそう。
姫余:完成度100ですね。「うまい」のひと言につきます。
健一:「封印固し」ですね。「固き」だと、詫び状が固いのか、鬼胡桃が固いのか、どっちにもかかってしまってあいまいです。どっちにしろ、季語は固くないもののほうがいいのかも。
はにわ:俳味の残る作品ですね。詫びたくない気持ちが見苦しくて好きです

蝶の真似して血脈の腕伸ばす   あかりや

特選:S字 一郎 かんこ 

S字:血管のか細さまで見えるような“血脈”という表現に魅力。
一郎:血脈って暗いイメージがあるので、この句に合っていないような気がしたが、蝶の真似して腕を伸ばしたというところが好き。
りえ:血脈の腕がつかみずらい。
かんこ:採血って何度やっても痛くて慣れない。わざとおどけて自分を励ましたりして・・。

陰映す鏡すべてを記憶せよ   山口あずさ

隆 鯨酔 りえ キフウ 

隆:詩としての力があり、これは準特選。
鯨酔:命令形の俳句はあまり好みではないが、これは自戒的で共感しました。
りえ:「陰映す」がすこしいいかげん?
英雄(選):たしかに、ここでは”陰”を”影”と表記するわけにはゆかないというのはわかる。
キフウ:バレ句かな、作者ダレ。
またたぶ:「陰映す鏡」まではいいと思ったんですが…
伸:季語を憶えるだけでも大変はのに、これ以上強制されても困る。
満月:「陰」は「影」のまちがいでは?まさか「ほと」じゃ……だったら逆選!

ホテル「らぶ」年中無休秋暑し   田島健一

特選:はにわ(ToT) 健介 りえ 逆選:鯨酔 

知昭:2時間3500円かどうかは知りませんが、季語が動きそうだなあ。
伸:そういえばラブホテルの定休日ってあまり聞いたことがないですね。
隆:こういうの好きです。選外ですが。
健介:「秋暑し」という季感が絶妙。「らぶ」という名称の“いかにも”という感じ。だからこそ「年中無休」が全くの蛇足に感じられるのが実に惜しい。言わずと知れたことじゃないですか。私ならこの設定に於いてもやはり意外性のある状況をもってきてはどうだろう?と考える。例えば「らぶ」という名称からしてあまり新しそうな感じではないから<ホテル「らぶ」改装工事中残著>などとしてみるのも“ラブホテル街の昼間”という雰囲気を醸し出せるのでは…とか。
鯨酔:当たり前の事を言われると一寸・・・。下五は年中OKなのも嫌。冬隣、寒に入る、寒の底、春立てり、あああああ。
りえ:ちょっと俗っぽいけど、つくりものっぽいけど、好きだ。
またたぶ:「ホテル「らぶ」年中無休」は推したい。それだけに「秋暑し」は残念だ。
はにわ:んーー 直球のような気もしないではないが隠微で素敵!いい汗かこうぜ!! (^O^)b
満月:そりゃ、暑くるしい。

待ち針をひゃっぽん刺されマネキン笑む   またたぶ

特選:恵 一彗 安伸 逆選:満月 

あずさ:マネキンって考えたら気の毒だよね。
恵:”ひゃっぽん”のひらがなが効いてます。
一彗:インドの行者もデビッドリンチも真っ青になる日本流の解脱法を教えてもらった。
満月:痛そう…うーん、マゾヒスティック。痛いときは痛いと叫びなさいよ、我慢してたってろくなことない。
安伸:正当派の外見、中身はきつい諧謔。

3点句

晩夏なり病む友の声笙に似て   林かんこ

優司 船外 あずさ 

あずさ:少しかすれているのだろうか。失うかもしれないという思いは悲しく笙の音は切ない。
健介:欠点はどこにも無いという印象の句です。正直なところ私が「笙」の音を明確にイメージしきれないために採るのを躊躇したということで…。やや“型通り”過ぎるかなぁ…って感じはあるかも。
優司:「晩」と「病」が響き合っています。「おい、大丈夫か? 元気だせよ」と思わず言ってしまいそう。でも安心。下五に至れば、「竹」冠に「生」。伸びやかに、快癒しそうじゃないですか。
船外:私ごとだが、一夏「絵手紙」を送り続けた。
英雄(選):たとえば、”病む友の声笙に似て”に上5をつけろといわれたとして、”晩夏なり”ははたして「最善手」だろうかという問題。逆に”晩夏なり”の方から”病む友”以下が導びかれたのであれば、まあ許されるか、解のひとつとして。美。
満月:晩夏、病む、笙が同質。幽霊が出てきそうだ。

かなかなや人はいつでも死んでいる   船外

斗士 一郎 はにわ(ToT) 

伸:北斗の拳みたいですね。
斗士:「人はいつでも死んでいる」の思い切りの良さに惹かれる。ただ「かなかな」は動くかも。
一郎:ひぐらしってどうしてだか死を思わせますよね。あっ、こういうの「付き過ぎ」って言うの?私は「付き過ぎ」って悪いことじゃないと思う。フィットしてるんだよ、この句も。そのあたりのこと議論したい。
はにわ:ちちろちちろで生き返る。。。
満月:もう死んでるんですかあ?物語りが始まらないうちに終わってしまった…。

ねこじゃらし遠くに置きあふれるよ水   満月

雄鬼 安伸 S字 

伸:なんだか忙しそうですね。
S字:緊張感のある世界。
雄鬼:遠くに溢れている水とねこじゃらし。この関係がいい。「置き」はいらないのではないか。
またたぶ:「水」にあと少し具体性がほしいのと、「よ」が「数合わせ」以上に感じられないのが残念。
安伸:イメージの展開が新鮮。

黄落やつれない人であったはず   さとうりえ

船外 伸 健介 

伸:イモ欽トリオのフツオくんの彼女のことか。
健介:思わせぶりな持って回った言い方にくるまれた“甘いもの”ってのも疲れている時なんか(別にそうでなくても)たまにはイイもんですよ…うん。
船外:なのに何故、想い募ってくるのか。

野性の馬に新聞各紙赤面す   中村安伸

帽子 一郎 ひろの 

一郎:新聞が赤面するなんて、わたしの詩的守備範囲からはずれています。だから気になって採ったのかもしれない。インパクトに押されて。
ひろの:「野性の馬」の赤面するには十分な存在感に対し、「新聞各紙」に実態がないのがいい。
あずさ:以前テレビ番組で夢の特集をしていて、女性アシスタントの睡眠を調べ夢をみているところをいちいち起こしてその内容を尋くというのがあった。善良なる女性アシスタントはさまざまな夢を見、やがて「乗馬」の夢を見た。人前で乗馬の夢を見てもいいのかしらと当時思春期であったわたしは思ったものである。

虚数追いかけてふるさとの稲の上   山本一郎

建穂 一彗 またたぶ 

伸:この句、理数系の方におまかせします。
隆:これも観念的。
一彗:「虚数」と「稲の上」のとりあわせに数奇な世界の・・・、出会いを期待したいが、「追いかけてふるさと」が通俗的すぎた。
またたぶ:感傷を除湿したら、こんな感じだと思いマス。
あずさ:数学者の里帰りかな? 虚体だと文学者?

ジョバンニシネバ秋しとしとと森の中   二上キフウ

建穂 一彗 かんこ 

一彗:フランスはヌウボーロマンシネマのラストシーンにこんな情景があるのではないかと想像してみたくなる。ところでジョバンニシネバとはなに?人の名でしょう。?
あずさ:ジョバンニってきっと長生きしたんだろうな。とわたしは思っているのだが、この句は何が言いたいの?
かんこ:ジョバンニシネバってジョバンニ死ねばかな?よくわからないけど、この音が、秋しとしと、と響きあってる。森の中とも。カンパネルラが川で死んだのはケンタウロスの祭の晩だった・・・。
建穂:銀河鉄道の夜からか。感覚で取った。「シネバ」のカタカナ表記はこの場合成功していると思う。
満月:ジョバンニは帰って来るんだっ!じめじめしないぞっ!
伸:銀河鉄道の夜をちゃんと読んだことないんですけど、これを機会にちゃんと読んでみます。

ボクサーの体のような柘榴かな   大石雄鬼

肝酔 はにわ(ToT) S字 

伸:石榴の味は、血の味に似ているということから、つきすぎた感じがします。
あずさ:ぼこぼこにされたってこと?
S字:言い得て妙。
肝酔:ボクサーの負った傷と柘榴の開いた様が重なり合い、思わず「痛い」と口走ってしまいそうな身体感覚に直接訴える句。
またたぶ:「ボクサー」と「柘榴」は遠そうで近い。
はにわ:おお、打たれ易いボクサー。。。ファイター系におおいですね。往年のたこ八郎とか。

炎天のアスファルト来るユダヤ人   足立隆

特選:鯨酔 伸 

伸:街頭で、アクセサリーを売ってらっしゃる人にユダヤ人が多い(ほとんど?)と最近知りました。実景俳句ですね。
鯨酔:インド人ではつまらない。アラブ人でもつまらない。ロシア人では・・・・・・。「00人と決めてかかるのは如何なものか」との声が聞こえて来る。でも、思い込みあっての詩ですもの。ところで、ユダヤ人って誰?
あずさ:コルボ神父ではないかと。。

野良終えてどの路行くも彼岸花   石津優司

特選:隆 船外 

隆:この耽美的な赤い世界は幻想的でもあり映像としての魅力を感じます。
健介:景の鮮明な佳い句だと思うのですが、「野良」を“野良仕事”の省略とするのにはやはり少々無理があるように感じます。<野良仕事終へどの道も彼岸花>とか…。
船外:人生かくの如くして彼岸へ向かう。
英雄(選):これや<台風の海へとむかふ中継車>の句をなかに混ぜておくと、互いに皮肉が利いてよいのではないかしらん。
あずさ:いつの時代に詠んだ句だろう。

ブランチのワインに透けし晩夏かな   鯨酔

健介 けん太 かんこ 逆選:肝酔 

伸:私には縁のないハイソな感じがします。
健介:「透けし」なのか、あういは“透かす”の方が好いのか? そのへんの詰めの甘さが少々あるのかもしれないが、雰囲気の好さにとても憧れてしまう句です。
けん太:本当はこんな世界はキライです。でも、この句はこの人なりの晩夏を切り取っていて、素直にいいなあと思ってしまいました。
かんこ:逝く夏を惜しむ、やっぱりワインは赤だろうな。
肝酔:東武デパートのチラシのコピーみたいです。ブランチとかワインとか晩夏とか、どれも手垢のついた言葉で、それをただ並べただけというところが、どうなんでしょう? と疑問に思ってしまいました。その他にも、バンドネオンとかサティーとか、ジョバンニとかその言葉を持ってくるだけで、なんとなく詩的、文学的、アーティスティックな雰囲気を醸し出すことができる言葉を使った句がありますが、その言葉だけに寄り掛かっている作品は皆つまらないと思います。

2点句

蝶番はずれているや秋の野   鉄守一彗

優司 けん太 

伸:下五のリズムが悪いのが惜しいですね。
優司:何気ない風景を的確に言葉にし、「秋らしさ」を表出している。俳句の題は、このように日ごろ見落としそうな壊れた蝶番という事物にも見出せることを教えてくれる句。
けん太:秋って充実感はすごくあるのだけれど、蝶番がはずれてるような、ちょっとした不安感もありますよね。秋の野の破調が気になります。
りえ:「や」が変?
またたぶ:「秋の野」ってそんなものですからねえ。
満月:リズムが悪い。「や」で疑問形になっているが、断定してくれた方がすっきりする。

ふっくらと火がふくらんで夏終わる    松山けん太

安伸 S字 

S字:やさしくて美しい光景。
安伸:「ふっくらと」が気持ちよい。

雨の日に果たす約束葛の花   鯨酔

斗士 伸 

知昭:きっちりとしたでき上がり。
伸:雨の日にしか果たせない約束って何なのか、すごく気になります。
斗士:上質のドラマ性。蔦の花が、まさに適材。巧みな句。

ダンサーの硝子のなかにたつ無月   大石雄鬼

特選:姫余 

姫余:ダンサーの硝子のなか・・という不思議な表現に、きらびやかな世界とは裏腹に、壊れやすい心と輝くことのない月=無月をもつ、このダンサーの存在を感じた。

高圧線二十世紀の芒原   足立隆

帽子 知昭 

あずさ:二十世紀が梨だったらおもしろいと思ったわたしは性格が悪い?

弟がくるる小遣ひ秋簾   白井健介

隆 肝酔 

隆:何故かひかれます。いい弟さんですネ。
肝酔:弟に小遣いもらうのは兄でしょうか?姉でしょうか? とにかく年下の者に小遣いをもらう複雑な気分が、秋簾という季語で端的に表現できていると思います。季語の使い方がとても巧みだと思いました。

紫陽花の紫色の我が祖国    松山けん太

特選:伸 

伸:NHKスペシャルの「街道をゆく」でモンゴルの夕日が紫色に輝いていました。掲句の「紫色の我が祖国」にそんな情景をオーバーラップしてしまいました。
景琳(特選):アジサイの変化の色が祖国に似合ってる。

あたしを買って 洞穴の罌粟あたためて   満月

斗士 安伸 

知昭:深読みしなくても面白い…と思うけど、多分。山口さん怒るかなあ。
斗士:ここまでやられたら、さすがに圧倒されてしまった。「買って」は「抱いて」のほうがいいかな、とも思ったが、やはり「買って」でいいと思いなおした。「抱いて」だと「あたためて」が明解すぎちゃうからね。
りえ:あずささんのご意見頂戴。
安伸:せりふ調の言い回しと「洞穴の罌粟」の隠微なイメージのとりあわせが面白い。
あずさ:みなさん、心配してくださってありがとう。罌粟の実からは阿片がとれる。。。この中毒性のある「買って」は恋と無縁ではないように思います。わたしにとって恋はありとあらゆる価値を凌駕します。みなさん、ちゃんと火傷しましょうね。

廃屋の裏へと続く花野かな   桑原伸

健一 鯨酔 

鯨酔:類想句ありとの批判は不可。具体的例示がある場合は可。この雰囲気は好き。
健一:花野が「続く」というのがいまひとつピンとこなかったです。「裏に広がる」だと平凡かなぁ。廃屋がちょっと意図的な言い回しのような気もしますが。
満月:廃屋と花野はつきすぎ。

ボナールの光なりけり銀杏散る   一之

雄鬼 健介 

伸:美術にうとい私としては、辞書で調べて、はじめてボナールを知った次第であります。
健介:『広辞苑』によると「ボナール」とは《フランスの画家。(中略)色彩自体の美を追求、「色の魔術師」とよばれた。(以下略)》とある。というのを知ると、なるほど説得力があるように思われてくる句です。
雄鬼:ボナールに寄りかかりすぎかとも思ったが、美しいので取りました。
あずさ:ボナールの絵に負けてると思う。この手の句はボナールの絵に拮抗するくらいのインパクトがないと。

月明り仏像みたいな猫と人   林かんこ

特選:船外 

船外:何か、とてもいいです。

彼岸花整形外科の道筋の    松山けん太

健介 肝酔 

健介:私の好みとしては「彼岸花」を下五に置く方がいいように思うのですが、つまり<整形外科への道筋の彼岸花>などにして…。いずれにせよ魅力的な句です。
りえ:説明をひっくりかえしただけ。
肝酔:彼岸花を整形外科と組み合わせるとなぜか不気味というか、不吉な感じが醸し出されて、面白いです。

六月の観覧車は鰓呼吸   山口あずさ

満月 またたぶ 

またたぶ:「森の陰部」に続く「鰓呼吸」はムズカシイ。健闘してるじゃないですか。
満月:うーむ、まさしく観覧車は鰓的形態、鰓的動き、鰓的リズムを感じる。そこに雨が降れば…もうこれは鰓呼吸するしかないのだ。

乳搾る瓶満々や牧の秋   石津優司

伸 健介 

伸:友人に牧場主の息子がいまして、学生時代アルバイトさせていただいたことを思い出します。
健介:「満々“や”」の切れが強過ぎないかなぁ…という感じが少し。「牧の秋」というイメージらしくなり過ぎちゃった嫌いはあるが、気分の良さがイイですよね。
りえ: 牧場の乳が飲みたい
満月:乳搾る瓶……「満々や」に切れがあるのでどうしても瓶が乳を搾ってしまう。もしかして全自動乳搾り機?

台風の海へとむかふ中継車   桑原伸

特選:健一 逆選:斗士 

知昭:そうなのよ。今年もごくろう様でした。
伸:(自解)出したあとで、川柳しちゃったなと、気づきました。あとの祭り。
隆:まさに生命がけの仕事であります。
斗士:これじゃ、そのまんま。中継車の懸命さを伝えるのなら、もっと書き方があると思う。
健介:“ちょっとマジっすか?”って思っちゃうほど当たり前過ぎるのではないでしょうか?
健一:いい句ですね。特に言うことはないです。

1点句

秋深し蓋をなくした醤油差し   さとうりえ

肝酔 

伸:不衛生なので、はやく変わりの蓋をみつけてください。
景琳(選):夜が長いから、ふた探せばいいのだよね。
肝酔:秋は感傷的な気分になりやすい季節ですがひとりよがりのオーバーな感傷よりもこの句のようなさりげない抑えたセンチメンタリズムの方が胸を打つものがあります。
ひろの:「ボールペンのキャップの行方秋の風 俵万智」を思い出しました。

コーヒー店月光の中口の中   中村安伸

知昭 

あずさ:コーヒー店が口の中にあるのか、口の中に月光があるのか…、ことばが不思議絵のよう。

カタカナできみが代 空が病んでいる   神山姫余

キフウ 

知昭:分かち書きについては言いたいことがたくさんあります。でも「けもの棲む空 朝の月俺を見るな」の句共々、こういう風に分かち書きを使えば効果あると思います。よく考えて有効に使いたいものです。
伸:コケノムスマデ。
キフウ:分かち書きじゃなきゃおよそ読めない句。
満月:「きみが代」はカタカナじゃない…単に「キミガヨ」としただけでも何らかの効果はあったと思いますが。
あずさ:俳句とほとんど関係のない話だが、以前下北沢の飲み屋で知り合ったおじさんが君が代のオルゴールを発明したと言っていた。。。商品化にはいたらなかったそうな。

穴惑かなた日当る家ならび   一之

伸 

伸:遠近を使われた絵画的な句ですね。何かに少し似てますが、この際よしとしましょう。

廃館の四角な窓の厭な月   千野 帽子

りえ 

あずさ:厭な出方する月ってあるよね。
りえ:かっちりとした中に投げ込まれた「厭」という主観がいい味出してる
満月:うーん、厭なって言ってほしくなかった。何か表現、なかったんでしょうか。

ナプキンで筋肉をふき秋闌ける   大石雄鬼

一彗 

あずさ:わたしは理科室の筋肉解剖模型を見ると具合がわるくなります。筋肉のことをあまり考えすぎると、じぶんの筋肉があるらしきあたりがとてもむずむずしてきます。
一彗:この句体は何処へいきつくのだろうか。気になるコードレス俳句のコードです。

不真面目も真面目のひとつ桃もすもも   田島健一

恵 

恵:桃もすもも の”も”はいらないほうが好きですが。
またたぶ:「○○も××のひとつ」型でいくなら、もう一歩の冴えを期待したいところ。

ぼんぼりも盲導犬に逆らうか   岡村知昭

帽子

あずさ:なんと反抗的なぼんぼり。それともぼんぼりだから逆らうのかも。

夕顔は崩れ女体は待たさるる   青嶋ひろの

斗士 

斗士:「夕顔」と「女体は待たさるる」が、とても良い接合。「崩れ」は、やや言い過ぎか。
あずさ:女体は崩れていませんように。

歯ぎしりや各駅停車for銀河   大須賀S字

知昭 

知昭:「For」が違和感ないです。うまい。銀河まで各駅停車じゃ歯ぎしりしたくもなりますな。
伸:銀河鉄道が各駅停車になったので、歯ぎしりしていらっしゃるのでしょうか。
りえ:forのつなぎがおもしろい。ハマリだ。

野分あと残りし雨の揚羽かな   白井健介

優司 

優司:秋雨前線の停滞や台風の接近で、秋は大風の吹くことが多く、これを「野分(のわき)」という。野を分けて吹いて行くことから付いた、風の名。米国ではハリケーンやタイフーンだが、「野分」とは如何にも日本らしい。その野分の後に見つけたアゲハ蝶。アゲハは大型の部類に入る蝶だが、よくも飛ばされないで、こんなとこに、隠れていたもんだ。そんな、弱々しくも逞しい生に対する作者の哀れみと驚愕の念が伝わってくる。

海見えず 生命線の昏(くら)き闇   北山建穂

鯨酔 

鯨酔:マイナスストロークの連続で気が滅入りますが・・・・・・・。たまにはいいか。
またたぶ:「昏(くら)き闇」だから「見え」ません。つじつま合いすぎ。全体のトーンは捨て難いのに。

毒入りの壜りらりらりらりら花野   満月

キフウ 

あずさ:時事俳句か?毒入り食品で死ぬのはあまり好ましくない。
知昭:皮肉な味のメルヘンですね。
りえ:オノマトペが楽しい。取りたかったなあ。
キフウ:やっぱり時事句だろう。花野に捨てるなよ。

腕組んで姉たちにオニバスの笑み   またたぶ

ひろの 

伸:オニバスは見たことないけれども、蓮って、なんとなく擬人化したくなりますね。
満月:こわい。姉が口裂け女。それも複数!私はやさしいよお。
ひろの:コケティッシュな笑みだらうか。

人影もなきアスファルト原爆忌   石津優司

建穂 

建穂:原爆忌という強い季語に、アスファルトという言葉はピタリと合う。人影もなき……無常を感じる。

党員の書棚に鱗月繊(ほそ)し   千野 帽子

またたぶ 逆選:ひろの 

またたぶ:「鱗」に「党員」の変節を感じたりします。しみじみと党員。
ひろの:「党員の書棚に鱗」は好きなのにー。座五がなんでこうなるのー。

めざめればふたりともはんぶんミルク   青嶋ひろの

隆 逆選:健介 

あずさ:意味がいまひとつよくわからない。半分ミルク状態で目覚めたのかな??
伸:BGMはロバータ・フラックのやさしく歌って。
隆:少し分かりにくいけれど、観念からは自由ではないかと…
健介:この私を以てすれば(?)“それなりの想像”を膨らまさせてくれる句だということは言えますが…でもねぇ…。「ミルク」がなんだかほのぼの。
満月:うちの猫、ミルクっていって、ちょっとふとりぎみ、ちょっと毛が長め。いっしょに寝ると、もうとろけてしまって、めざめたときにはどこまでがあたしだか、どこからがミルクだか………

夕暮れにまた一つ坂道のぼる   林かんこ

はにわ(ToT) 逆選:知昭 

知昭:そのまんま。
伸:夕刊の配達ならば、ちょっと大変そう。
はにわ:ご苦労様です

チノボーの目深帽行く彼岸花   船外

帽子 逆選:S字 

知昭:ほんと、工場の皆さんに会いたいよー!!チノボーさんは目深帽してるんですか、よし覚えたぞ。
伸:最近気になることがあるんですが、チノボーさんて男性それとも女性?
S字:特定の個人を詠んだ効果以上に、内輪ウケ狙いが鼻について、いやらしさだけを感じてしまう。
りえ:かわいい挨拶句。合宿のときのですか?
帽子:題材が悪い。でも3句投句の1句をこの題材にした悪食の勇気を買います。「チノボー」キーワード化計画か?
満月:あっけらかんのチノボーに彼岸花はちょっと毒々しすぎるか。個人的には目出し帽の方が意外性があって好み。そうそう、彼岸花の種類で黄色いのにキツネノカミソリっていうのがあった。あ、チノボーとキツネノカミソリじゃつきすぎだ。

その他の句

卵割る 生命(セイ)の不安を抱きながら   神山姫余

伸:ナイーブな句ですね。

りえ:一字アキが無意味
またたぶ:いいセンだけど、掘り下げ不足。2年前の現代俳句全国大会で「冷蔵庫にいつも卵のある不安」という句が入選していたが、それを超える「卵不安俳句」はまだ見ていない。

生きてきた蛍光灯やちちろ虫   肝酔

伸:あかしが蛍光灯になったわけですか。う〜ん、ちょっと考えさせてください。
またたぶ:境涯俳句ですか?

蟷螂やバンドネオンの音に乗せて   桑原伸

りえ:ちょっとつながり弱い

鶺鴒の眼下を走る鯔背川   鉄守一彗

伸:一般の俳誌で見られるような、このような句も青山では異質となりえるとこが面白いです。
満月:どこにある何と読むどんな川なんでしょう。人に知られていない固有名詞を使っても景色が浮かびません。

外でも具合でもどっちでもいいホームラン   はにわ(ToT)

健介:もしかしてこういう意味?って思いつくこともなくなはい。でもやっぱりねえ…う〜ん…訳わからん。

けもの棲む空 朝の月俺を見るな   山本一郎

あずさ:自意識過剰なのではないかと。。。
伸:見ません。
はにわ:かっこ付けすぎ。。。

秋日迷い落ちサドルのズレ左   二上キフウ

伸:なぜ、サドルって、あんなにもズレたがるものなのでしょうか。
健介:「サドルのズレ左」なんていう眼の着けどころがとてもいいですよね。「迷い落ち」って感じがちょっと分からなかったのだけど…。

目高泳ぐほどの涙と覚えけり   大須賀S字

あずさ:目が腫れてしまう。

狐火が近づく骨の無い體(からだ)   北山建穂

あずさ:くらげが詠んだ句。
満月:コワ…くらげさんのお墓の句でしょうか。

さよならと、真っ赤なプラムをにぎりしめ   にゃんまげ

あずさ:潰れちゃうよ。
知昭:上五にテン打った効果は…多分しなくてもよかったんじゃないでしょうか。
りえ:さよならとプラムを握っているのか?さよならと言ってプラムを握ったのか?

厩舎に哀しき眼あり伶人草   鉄守一彗

あずさ:馬の眼が哀しいってゆうのは、発見とは思えない。

台風や 胸騒ぎぞする 千日草   恵 来庵

あずさ:台風で胸騒ぎは当たり前。
満月:字空け無意味。

蔓珠沙華カラスは墓で団子食   船外

健介:“鴉らしさ”はよく描けていますよね。「墓」と「曼珠沙華」は付き過ぎますが、内容が面白い。「カラス」はやはり漢字にすべきです。<曼珠沙華墓の団子は鴉が食ふ>などにするとか…。
英雄(選):作者はどこか田舎の方の小学生でもあるか。演劇の仕舞のなかなんぞでは十分につかえるだろう。
あずさ:実際にある風景なので、あまり面白くない。最近墓参りをするとお供え物はもってかえって下さいというアナウンスがあったりする。。。
満月:カラスの勝手?曼珠沙華と墓とカラスはあまりにもつきすぎ。

曼珠沙華高圧電流危険は承知   肝酔

あずさ:曼珠沙華はかくも覚悟した花なのだ。それはさておき、この句はやはり付きすぎだと思う。
りえ:標語のようだ。

ロシア人笑うも依然まっぴるま   岡村知昭

あずさ:ロシア人が笑うというのは他の国の人が笑うのとどこか違うのでしょうか。

宵闇に、花火の照らす夏の恋   にゃんまげ

逆選:りえ 

知昭:いかに手を尽くしても内容がね。使い古されてる。
隆:平凡。
にゃんまげ:やはり恋は夏に限ります
りえ:季語だらけを狙ったのか?句読点の必然性は?
満月:読点不要。

”君”というファイル削除し 再起動する秋   恵 来庵

逆選:安伸 

伸:さらば夏の思い出。
隆:「する秋」は余計ではないですか。五・七・五とした方がすっきりします。
りえ:説明くさい
景琳(選):再起動の恋がわかる。
満月:若くっていいなあ。表現はともあれ「再起動」に祝福!
安伸:とってつけたような「秋」がちょっと。

ヒルぶら下げた傷心の宵闇   はにわ(ToT)

逆選:かんこ 

知昭:「傷心」が余計かなあ。
かんこ:ヒルぶら下げた宵闇、このイメージは好きです。ただ、傷心、と言ってしまうとつまらない気がします。かんこ。

十五才、僕を抱いてる終戦記   神山姫余

逆選:帽子 

知昭:上五にテン打ってるのはなに?
満月:無用な読点ですべてがあいまいになった。「十五才の」ではないのか。

熟るる月梢に実り秋尖る   はにわ(ToT)

逆選:隆 

隆:季重なりはとくに気にはなりませんが、これは余りにもひどい。

熱き腕、君の吐息に触れる朝   にゃんまげ

逆選:一郎 逆選:あずさ 

伸:BGMは、ミニー・リパートンのラブイン・ユー。
一郎:そんなこと別に聞きたくもない。
りえ:酔ってるなあ。
満月:腕は君の吐息に触れる前から熱かったんでしょうか。汗でべとべとしてません?読点不要。
あずさ:ちゃんと歯を磨いて寝たのかなぁ。