第12回 青山俳句工場向上句会選句結果

(長文注意!)

みなさんにお願いです。選句のときは句番号と句と両方を書いて下さい。(ときどき、番号と句があっていないことがありますので。^^;。)
リストから、カット&ペーストしていただけるとそれが一番有り難いです。
さて句会ですが、今回も賛否両論。もっとも今回はわたくしめもかなり危機を感じております。
みんなー、しっかりしよーよぉ。(→特にわたし)
選句評はきびしーく、明るい未来の発展をめざしましょう。
業績の下方修正はいやよっ。
んでは、次回はちゃんと向上しましょうねっ。

向上句会とりまとめ:山口あずさ


投句:宮崎斗士、千野帽子、中村安伸、白井健介、後藤一之、大石雄鬼、田島健一、またたぶ、満月、山本一郎、うまり、カズ高橋、さとうりえ、しんく、すう、としや、にゃんまげ、肝酔、鯨酔、桜吹雪、秋、松山けん太、城名景琳、足立隆、天乃晋次、白鳥光良、北山建穂、立川圓水、林かんこ、和田満水、山口あずさ


全体的な感想

うまり:おもしろいです。いつも50歳以上の人たちとしか句会をやったことないので、ものすごく心落ち着く。はー。苦しかった〜。(泣)

景琳:今回,選びたいのがもっとあった。選句がいい句とは限らずあしからず。味のいいもの,未来に続くの,個人的趣味。

圓水:今月は低調だったと思います。自由句は山頭火からほど遠い。次回を期待します。

けん太:やや。最近、作ること以上に、読むことに力を入れているつもり。せっかく、みんなが一生懸命作ったのだからね。で、はっきり言うと、今回も深ーく包み込んでくれる句がなかった。ザンネン!やっぱり、詩だからね、俳句は。言葉遊びも詩の方向でやらなくちゃ。などと、偉そうに言ってますよ。

満水:破調句の中には感動する句がありましたが、定型句よりどちらが優れているかというと、物差しを持たないので定型句を選んでしまいました。

満月:工場句会初参加最高のつまらなさだった。どうして日常のできごとを日常的に書いた詩的操作のないものがこれほど集まったのか。オープンのWEB句会という性格がすっかり裏目に出てしまった。ここでまた井戸端会議的「そーなのよー、アタシモー」「あーわかりますう」「いいお言葉ですねー」的な感想がずらっと並んでそれらの句に点が入るだろうことを思うと、向上句会の前途に果てしない絶望を感じる。ということで今月も毒舌満載。せめてしゃきしゃきテンション高い句評してよ。

またたぶ:自句を含め、不満が先立ちます。「俺も悪かった」

にゃんまげ:2句選ぶのがやっとです。ふう・・

しんく:浅学ゆえ今回意味を理解できない句が多かった。ジェンダーもシスティーナもわかりませんでした。ごめんなさい。

雄鬼:今回は、ちょっと選べる句がなかなか見つかりませんでした。言葉に重みがないと言うか、実在感がないと言うか。わかりすぎたり、結局何が言いたいのかわからなかったり。まあ、皆さんの選を見て、この句はよかったなあと、後で思うのではありますが。。。

健介:自分の句については棚上げ致しまして、と言うより皆様のご意見を謹んで拝読いたすこととして、どうしたというんだッ!向上句会ッ。前回に輪を掛けてからっきし“向上”してないじゃないスかぁッ! 12回目にして存亡の危機? 私が足を引っ張ってないことを祈るばかりです。

隆:作句より選句が難しいとはよく云われますが、いつも同じことを感じています。今回はとびぬけてよいものも、非道いと思うものもなく、一週間后に選句をすると又違った結果になりそうです。俳句は表現です。説明にならないように。しかし、その紙一重が面白いものを生み出します。表現のみに拘ると、ひとりよがりになってしまいます。


14点句

春満月組体操のはじまりぬ   宮崎斗士

特選:満月 特選:肝酔 特選:としや 秋 桜吹雪 健介 一郎 一之 しんく けん太 圓水 

圓水:春の夜の体操とは、ちょっとエロチックですね。幻想的な雰囲気が好きです。
けん太:これは何かの大会のマスゲームみたいなものかな。そうやって読んじゃいけないんだよね、多分。満月と組体操の取り合わせに不思議な感じを抱くゆとりを読む側としては持ちたいな。
としや:前衛映画のワンシーンみたいです。煌々と照る満月を背景に、真っ白な運動着の少年たちが高く組みあがる。幻想的な美しさを感じました。
桜吹雪:春満月、月組体操とウッカリ読んでしまいそうな漢字の組み合わせ。満月下での組体操の影もくっきりとありあり映像化できる感じ。
一郎:組体操もこうなるとなまめかしい。
秋:配合の妙と言う感じ、春満月と組体操の白い世界、非現実的なのですが、メルヘンとも違う、強いて言えば無重力感があって、新鮮な魅力を感じました。
満月:シュール。デルヴォーの絵画やある種の映画、マネキン的パフォーマンスを思い浮かべた。アールデコな化粧をした50年代風水着の女性がスローモーションでベジャールのバレエのような体操をしている。そして次第に何かに変化(へんげ)してゆく・・・実に春満月である。
肝酔:春の満月の夜なら、どんな不思議なことが起こっても変じゃないけど、組体操というのが、まことに意外で面白い。不気味というか、脳天気というか、なんか気になる句です。
しんく:絵として綺麗。
健介:酔ってそんなことすると怪我しますよ。でもいるんだよなぁ始める奴って。とすると<組体操をはじめたる>と他動詞にする方がいいかも。

9点句

三月をよこ切る充電式の犬   千野帽子

特選:うまり 晋次 桜吹雪 建穂 一郎 としや あずさ 満月 

うまり:欲しい。メカ系3Dグラフィックの、でかい犬が目の前をのし歩くのを見ちゃったら、秋頃に感慨深く想い出に耽ると思う。
としや:旧型ロボット犬は春を感じる機能が装備されてなかったのです。同じロボットとして、アトムは悲しい思いをしています。
桜吹雪:ううん、ちょっと充電式が説明的なんだけど。よこ切る犬は好きだから。
一郎:3月っていろんなことが起こるんだね。「だって狂った桜が咲くのも3月」って、井上陽水が昔歌ってたなあ。
満月:ねじ巻き式の犬が浮かんだ。毛のもこっとしたぬいぐるみの犬がきっこきっこと歩いて横切る。道は三月。あたたかし。
またたぶ:「三月をよこ切る」を練ってください。
晋次:この句はいろんなことを示唆していておもしろく勉強しました。
建穂:充電式の犬が面白い。
健介:この手の発想って僕はあまり面白いと思わないんですよね。
隆:充電式の犬は面白いイメージです。
あずさ:ぎこちない動きが目にうかびます。ほれほれ、お姉さんとこおいで。

ガラスの部屋に三十二個の扇風機   中村安伸

特選:隆 特選:帽子 特選:光良 桜吹雪 あずさ 雄鬼 逆選:景琳 

帽子:コンセプチュアルアートだ。
景琳:ちょっと寒い時,扇風機がもっと...寒っ。
桜吹雪:全体の作りが少しあざといかな。と思ったけど三十二という数には説得力がある。
満月:不可思議な光景だ。どう映像を思い浮かべてもヘン。三十二個とは?扇風機とは?「ガラスの部屋」であるからかなりの自意識の産物なのであろうが。
光良:この句が作り出す映像は確かな存在感があります。
雄鬼:どういう情景かわからなかったが、三十三間堂のように、ここでは扇風機が並んでいる光景が頭に浮かんだ。
隆:温室と思うとそれまでですが、扇風機が首を振り32台が動いている光景は見事です。
あずさ:なぜ三十二個かという説明はできないのだけれど、今一瞬三十二個の小さな扇風機の髪飾りをつけた巻き毛の女の子が思い浮かんだ。わたしはどうかしているのかも。

7点句

梅咲いて麻布の屋敷失せにけり   鯨酔

特選:一之 景琳 またたぶ けん太 かんこ 満水 

景琳:屋敷が消えても梅が咲く泣く。
けん太:これはちょっと迷ったよ。大きな句なのか、まんまの句なのか。大きな句として取ったんだけど。
満水:近所にも廃屋の庭に梅がいつもの年とは比べようもなく梅が咲いていました。麻布の梅はもっと立派だったんでしょう。
満月:なぜ麻布か。有名なエライヒトの家がある?麻布と言わなければ梅の妖気が伝わってくるのだが。私が知らないだけかもしれない。音感や高級住宅街という印象だけで受け取ってみてもいいけれど。。実在の地名はやっぱり生臭さが伴って二の足を踏む。
またたぶ:麻の布でできた屋敷がすーっと消える様子を思い浮かべてみた。これが「駒場」とか別のとこだったら採りませんね。
かんこ:麻布の屋敷・・なつかしい響きですねぇ。現在の麻布はマンションだらけ、屋敷は死語に近いほど失くなりました。
あずさ: そもそも麻布に屋敷を持ったことがないのでなんとも。。。
健介:「屋敷失せにけり」がどういう内容なのかはっきりしないのでねぇ…

鈴木世界も佐藤世界も春立ちぬ   中村安伸

満月 帽子 斗士 光良 健一 一之 カズ 逆選:満水 

帽子:ブローティガン? 高橋源一郎?
満水:元総理のお二人ならば、今更。
満月:またこの手にはめられてしまったか。・・・結局こういうのしか取れない状況の危機的青山俳句工場向上句会である。おおらかでいいんだけど。
光良:この表現は広がりがありますね。
健一:フジテレビの「トロイの木馬」でやってましたね。でも、それとは関係なく、面白い句ですね。それぞれの名字にそれぞれの世界があるってわかる気がします。
斗士:大胆な持っていき方に感服。「春立ちぬ」よく効いている。
カズ:おもしろい、鈴木、佐藤の名字の使い方が良い。
健介:だから何なんだっちゅうのッ!

6点句

さかあがりできたくらいのうれしさよ   にゃんまげ

特選:りえ 桜吹雪 かんこ カズ 隆 逆選:一郎 逆選:安伸 

桜吹雪:いいんだけどな、わかるんだけどな、あと一味切れをよくしてほしいなぁ。
一郎:何がうれしかったか分からないよ。
満月:下の句でその物語を付けてください。「うれしさよ」が問題なのです。
りえ:表記についてまた意見が出そうだけど好きさ。
かんこ:そんなに嬉しいことあったんだ。よかったね!!
あずさ:よかったね。おめでとう。ところで、お幾つですか?
健介:何が? どんなことが?
隆:そういううれしさの表し方もあったのですね。でも、もうこの手は使えません。
カズ:人生って、こんな気持ちですよ。
安伸:なんとも芸がない気がします。

5点句

あんまんの餡が嘘をつく春夕べ   白井健介

特選:圓水 特選:建穂 斗士 

圓水:「あ」音のリズムが楽しい句ですね。「餡が嘘をつく」ことは、「亀が鳴く」ような感じで、いかにも春らしいと思いました。
満月:おもしろいが「が」「を」と続けざまに助詞がくるのがちょっとつらい。リズム感に必然性を感じられないから一字の字余りがせせこましく感じるのだ。
またたぶ:どこの結社(笑)でも、「この句めっちゃ海程入ってんなー」とか「青玄ぽい〜」といった独自の句臭が(よくも悪くも)生じるようだが、この句は「青山くさい」と思いませんか?
建穂:春とはいえどもまだ朝夕は寒さが骨身に凍みる。そんなときに齧るあんまんのぬくもり……春とあんまんの取り合わせが面白い。「嘘をつく」は、ちょっと出来過ぎかとも思えたが、でも「春」の夕方ってそんな感じ。
斗士:「嘘をつく」の意外な感じが好。中七のリズムの悪さが気になるが。
あずさ:こしあんだって言ったじゃない!

底なしの底に交わる蛇と月   天乃晋次

特選:斗士 けん太 うまり 隆 

うまり:京極夏彦の世界が匂う。井戸の底は何処かへ続くのだろう。
けん太:蛇と月が底なしの池で交わっている句なのか、もっと意味の深い句なのか、考えたね。思わせぶりかな、
満月:隠微。今月はこのような根暗な作品に心を動かされにくいが、他があまりにもぐずぐずなので、持ち点があれば一点を投じたかった。
斗士:この艶っぽさは、ただごとではない。「底なしの底」に、してやられた。
健介:「底なし」なら「底」は無いんじゃないの?
隆:底なしの底とは? そこに蛇と月、あぶないイメージもありますが、耽美的。俳句の奥深さ。
あずさ:<底>、<蛇>、<月>、紋切り型のような気がする。

iMac五色並んで春隣   白鳥光良

特選:満水 建穂 肝酔 りえ 

満水:パソコン売場で形といい、色といい、人工の春になりました。私のは氷河期のを使っております。
満月:つきすぎ。
りえ:ちょっと出来すぎな気もするけどいい。
肝酔:私はMac userでしたが、この春からWindowsユーザーに転向しました。その罪の意識が選ばせた一句です。
建穂:なんか爽やか、もうすぐ春って感じ。
あずさ:わたしはマックユーザーですが、、、、。。。、、、
健介:「春隣」がちょっと安易かなぁという印象を受けました。
隆:店先の風景、もうすぐ春ですネ。

あんパンを囓る日永となりしかな   北山建穂

圓水 隆 健介 一之 うまり 

うまり:あんパンは平和の象徴。
圓水:「なりしかな」は冗長なようですが、実は日永を巧みに表現しています。
満月:あんパンネタはもうマンネリ。しかも日永というマンネリとつきすぎ(!)の措辞でいよいよぼお〜〜〜〜〜としてしまう。またやるなら、次回は踊るあんパン、翔ぶあんパン、人を斬るあんパンくらい見せて欲しい。
あずさ:あんぱんが美味しそうでなかなか好感の持てる句。
健介:美味しいですよねぇ。あんパン。
隆:囓るで切れるのでしょうネ。そうでなくては。

逡巡を重ねし春の水準器   鯨酔

特選:桜吹雪 晋次 建穂 満水 

桜吹雪:水準器とは道路工事のとき三脚立ててオジサンが片目で除いているアレであろうか。シュンジュンと水準をかけているのが割りとうまく決まっている。針の定まらない水準器を擬人化したところも春という季節感にマッチしてグー。
満水:水準器は基本中の基本機器です。いろいろの思考の末、今決定してこれから建築が始まる姿が見えます。
満月:水準器はやっと収まっている一瞬以外は常にたぷたぷと逡巡しているように思う。従ってつきすぎ。
晋次:「春の水準器」の季語扱いに魅了された。逡巡と水準器が意味の補完作用として完結するのがものたりないが、詩があります。
あずさ:水準器って何かなーと広辞苑を引いた。「ある面が水平か否かを検する機器──広辞苑より」、なるほど。で何だって?
健介:語呂の上での仕掛けは心地好いです。
隆:逡巡と水準器の地口がみそ、あと一歩。

補助輪のいつ外されし風光る   白井健介

特選:にゃんまげ 光良 一之 りえ 

満月:健康で明るい風景。こんな「ご近所モノ」が俳句として通ってしまうところが問題だ。
りえ:「外されし」は変だと思うけど、どきどきする感じが伝わってくる。
にゃんまげ:成長の春・・・
光良:今回のほのぼの系の中では一番気に入りました。
あずさ:かわいい。が、かわいすぎる。

白黒の軍艦ふかく眠る冬   天乃晋次

特選:けん太 特選:かんこ 帽子 逆選:桜吹雪 

帽子:「ふかく」はストレート過ぎるかもしれないけど、いい感じがする。
けん太:まず「眠れる獅子」をイメージしたよ。もともと軍艦は白黒のイメージだけどね。こういう脅しもある世界好きだね。声を上げて読むと調子もいいしね。
桜吹雪:おっとこの句は作ってしまいそうだから逆選。白黒ーふかくー眠るー冬と叙情の方向が一直線。
満月:モノクロではなく白黒だと、くっきりと真っ黒・真っ白のコントラストが浮かぶ。眠っているより何かを研ぎ澄ましている新型軍艦のイメージ。そう考えると、怖いことは怖い。
かんこ:しーんとした冬の情景が見えます。白黒の軍艦がいい。
あずさ:軍艦が眠るのはつまらない。しかも冬。。。

4点句

紋黄蝶夢のとおりに死になさい   山本一郎

斗士 またたぶ としや あずさ 

満月:なぜ紋黄蝶なのかと最初ひっかかったが、次に紋黄蝶だから悲惨にならずにすんだのだと思った。しかしやはりかわいいイメージが先に立ち、夢・死というイメージと隔たりがある。つまりこの紋黄蝶は観念的で実物の存在を感じられず弱いのだ。
またたぶ:紋黄蝶が一頭三途の川を渡つていつた。
斗士:「紋黄蝶」が決まっている。
健介:冗談じゃねぇっスよッ!──紋黄蝶(談)
あずさ:とんでもない正夢。

春の日の空き地をしめる便器かな    松山けん太

圓水 雄鬼 としや しんく 

圓水:春の不思議な空間を描いている。異次元空間へトリップしたいのは、春ならではの気持ちであろう。
としや:子供のころ、こんな光景にであったことがあります。雑草の合間から無機質の光りを放つたくさんの便器・・・・・・オブジェのようでした。
満月:この手は飽きた。便器があってナンボノモンジャ。子供の頃、我が家の近くにはなんとTOTOの工場があって、毎週高く積み上げられた真っ白い便器の山を見に行っていた。あの造形はたまらなくシュールかつキッチュで見飽きなかった。比べるものが強烈で損させました。この句、「春の日」「空き地」がのほほんとしているから便器も口空いてのほほんとしてしまう。便器の特異さが効かない。
しんく:このアングルが映画のオープニングてのも悪くないかな。
雄鬼:廃棄される便器が、無造作に積まれている様子なのだろうか。春の日がよかったと思う。
あずさ:泉のまちがいでは?
健介:そんなに幾つもあるわけですかぁ。

掌で触るるものみな一月一日   足立隆

特選:カズ 晋次 健一 

満月:昔々あるところにわがままな願いを持った王様がいて、さわるものがみな金に変わってしまうので、食べ物が食べられずに飢え死にしましたとさ。「一月一日」という表現は正月の特殊性をあまり伝えてくれない。従って清浄かつ晴れの気分になれなかった。この句に触れることで晴れの気分になれなかった。この句に触れることで晴れになりたかった。
晋次:地味な感じで見過ごしていたが、ただ事でない世界を書き留めている事にきづいた。
健一:いいと思うんですけど、時期はずれですね。今の時期読むと、四月一日でも三月一日でもいいような気がしちゃうから日本人てふしぎだわさ。
あずさ:賞味期限切れってことか?
健介:まあその気分はとてもよく解るんですけどね。
カズ:イイデスネ。

たんぽぽや牛の鳴き声絶え間なく   立川圓水

斗士 健介 にゃんまげ しんく 

満月:超牧歌的、超日常的。といってもこんな日常は今どこにあるんだろう。ここで「アサ〜〜〜!」(古い!)と谷岡ヤスジの鳥が叫ぶくらいのことがないと、全く俳句にも何にもなりやしない。
にゃんまげ:故郷の春・・・
しんく:都会にすんでると、こんな感じに憧れてしまう。
斗士:のどかさで押し切った。
あずさ:もぉーもぉーもぉーもぉー、ってか?
健介:牛の多さ、広大さ、のどかさ、そして「たんぽぽ」。過不足なくきっちりと詠み込まれた佳句だと思います。

3点句

血は水よりもさらさらとゆけ春の川   満月

満水 またたぶ カズ 

秋:春の川が分からなかった。
満水:血が流れにくくなるといろいろな病気になるといわれています。健康万歳。
満月:なんだろうね、この句は。春の川じゃアタリマエ。つきすぎ。何考えてんの!まあ「雪解川」っていうようないかにもいかにもの季語にしたくなかった気持ちはわからないでもないが。。。(自解ではない)
またたぶ:上五中七にブラボー!と叫んだ。しかし「春の川」ねえ… 動くでしょ。
あずさ:さらっとしてるね。
健介:川に血は流さない方がいいですよ。
カズ:さらさらとがイイデスネ。

遊戯室うつぼの影がうつぼめき   またたぶ

特選:安伸 満月 

満月:うつぼっ!うむ、うつぼの「影」がうつぼめいてくるということは、うつぼが踊っていてうつぼの影が踊っていて、それがうつぼっぽくてうつぼがうつ・・・(XX)X(??)?・・・うつぼはいいなあ。実に春。「春満月」の句と特選を争った。
あずさ:うつぼめく、という言葉を使って、他の句をつくってみてください。うつぼめくという言葉はかなりおかしいと思う。
健介:「うつぼの影」が「うつぼめ」くのは当たり前としか感じられませんでした。
安伸: 遊戯室とうつぼのとりあわせでかなり来た。まとめかたもさらに感動的。

見晴るかす皇居にシミーズ春の風   肝酔

特選:しんく としや 

としや:シミーズって女性の昔の下着のこと?。皇居と昭和の女性下着と春・・・・・・歴史的な意味があるのかなあ。
満月:せめてズロースにならなかったか。
しんく:シュミーズとせずシミーズとしたところにつきぬけた明るさを醸し出した。
あずさ:洗濯物が干してある。向こうの方に皇居が見える。で、どうしたのかなー。
健介:見たくない、知りたくないと思うことの一つです。内緒にしといて欲しかった。

灰色の雪雲ぐわり滑走路   桜吹雪

雄鬼 肝酔 かんこ 

満月:ぐわり程度では力も大きさも大したことはない。それなりに景色は見えるが、これから飛び立つ飛行機の不安が伝わって来ないので、ただのスナップになってしまった。
肝酔:私は冬という季節が苦手で、俳句もなんか静的で暗い句しかできなくなっちゃうもんでこういう冬のダイナミズムを捉えた句には感心します。
雄鬼:雪雲の中を降下して滑走路が現れた光景か。雪雲のぐわりとした感じがいい。
かんこ:ぐわり。動きのある句です。
あずさ:滑走路でなければ、少しよかったかもしれない。雪雲って確かにぐわりという感じがするが、滑走路と言われると、ようするに飛行機が飛び立つ瞬間なわけかと思ってしまう。これは想像をしぼませる効果しかないと思う。
健介:う〜ん…「ぐわり」ですかぁ…

森よほうれん草に塩ふるしぐさ   田島健一

雄鬼 帽子 秋 

帽子:「森」と「ほうれん草」の色によるアナロジーを狙ったのかどうか。魅力的なフレーズではある。
秋:ほうれん草の塩もみなんて、灰汁ぽくって体に悪いし食べれたものではない。森の今抱える問題、酸性雨や管理の人手がないことなどを比喩しているのかなと解釈しました。社会問題を句にするのは大変難しい。ジェンダーの句もそうですが、比喩が効いているといい句になるように思います。
満月:あたしゃホーレン草に塩はふらないけどねぇ。このヒトはふるのか・・・何つくるのかなあ。せっかく「森よ」と高らかに読みかけているのに「しぐさ」で指先の技となった。
雄鬼:「森よ」がいい。「ほうれん草に塩」とよくマッチしている。「しぐさ」は何をいわんとしているか、私にはよくわからなかった。
あずさ:どうせなら森に塩をふってしまいましょう。大きな口を開けて森ごと食べてしまいましょう。わたしならそうします。
健介:う〜ん…よく分からない。
カズ:ダイオキシンのことか?

春爛漫ふりむきし人ピエロの眼   としや

満水 一郎 またたぶ 

一郎:春爛漫の中で「ふりむきし人」ってこわいよね。「ピエロの眼」で落ち着くべき所へ落ち着いてしまったことが、ちょっと不満。
満水:世の中にはうわべを合わせている人がいますが、目には本性が現れます。すばらしい観察力で感心しました。
満月:どうしてこう説明調に落とすのだろう。ぱっと手離れよく「人」なんか登場させないで眼だけいきなり登場!という具合にはいかなかったか。詩になるとならないの境だ。
またたぶ:採不採を一番迷った句。今回の他句に比すれば抜けてるんだけど、私には「この句はもう少しいけるのに」という不足感の方が強かったので。
あずさ:厚化粧ってことか?
健介:そういう眼の人もいますよね。春ですからねぇ…

お茶漬けをすすつた後の絵踏かな   しんく

秋 健介 安伸 

秋:おいしそうに食べるCMを思い出しました。絵踏みとはただならないのですが、在りそうな気がして、この飛躍が良かったです。
満月:絵踏って?踏絵のこと?お茶漬けすすって・・・???
安伸:お茶漬けをすすつた後の絵踏かなシチュエーションの展開のしかたが面白い。
健介:あっしら気楽なもんすからねぇ、て感じがとてもイイですね。
あずさ:寝る前のお茶漬けは太りそう。絵踏って、もしかしてキティちゃん付きのヘルスメーターのこと?

北風の脊椎の 科ナクテ死ス   山本一郎

満月 安伸 あずさ 

満月:北風の脊椎−−おお、骨句だ!「科ナクテ死」んだ脊椎はさぞかし「骨のある」脊椎だったことだろう。矜持が北風にすっくと高潔である。
安伸:北風の脊椎の 科ナクテ死ス言葉のイメージの連なりが刺激的で、良い。
あずさ:いろはにほへとを七文字置きにつなぐと、というのを思い出した。「とかなくてしす」になるんだよね。

この青空がいいね 地球最期の日   白鳥光良

隆 一郎 うまり 逆選:りえ 逆選:カズ 

うまり:愛の行方。穏やか。爽やか。お釈迦様。
一郎:あれこれと作りすぎず、「この青空がいいね」と単純に言い切ったところがさわやか。
満月:なまぬる。
またたぶ:さらばだ記念日 
りえ:この青空がいいねと君が言ったから○月○日は地球最期の日(○の部分にお好きな日付を)
あずさ:いいも悪いも。
健介:私の場合はきっと最後の最後まで諦められずにジタバタしているだろうと思う。
隆:「サラダ記念日」の明るさより、この句の持つ世紀末的イメージが勝っています。
カズ:つまらない。

雪解けて坂道にあるコンドーム    松山けん太

特選:雄鬼 肝酔 逆選:隆 逆選:うまり 逆選:あずさ 

うまり:爽やかに体力消耗中、色鮮やかさに萎える。
満月:この句、作者がそれを見てどう感じて句にしたかったのかが伝わってこないところが気持ち悪い。雪解けの下にあるコンドームも造形的なおもしろさはなく、ただ汚い。このコンドームはここで春の気を吸い込んで大きく勃起すべきだったのだ。
肝酔:あるんだよね、意外なところに。でもなぜ坂道に? ああ、こんなところでも人は、という感慨。なんか冬から春への心のうごめきに通じるところあり。
雄鬼:何故こんな所に、ということがよくある。雪が解けて人間が動き出すという感じがかすかにする句。坂道の必要があるかどうか、「雪解けて」ではなく「雪解けの」がいいのではないかと思いながらも、作者の心の動きが感じられたので特選。
健介:この句も「だから何なんです?」という印象です。
隆:使い古しのコンドーム、うす汚れた感じは頂けません。
あずさ:実際に落ちてたってわけ? これほど身も蓋もない雪解けも珍しいけど、作者は奇をてらったつもりなんだろうか。。。--;。

2点句

キューピーが埃をまとひ梅咲けり   大石雄鬼

圓水 けん太 

圓水:「埃をまとひ」がうまく、写生が効いた句だと思います。
けん太:まんまなんだけどね。キューピーと梅の取り合わせがいいじゃない。発見の面白さかな。
満月:冬じゅうキューピーあそびしてたのに、春の声が聞こえてきたら、そわそわと外遊びに出かけてしまって・・・しかし「梅咲けり」がむつかしい。
あずさ:まとってるんじゃなくて、それは汚れてるのさ。
健介:表現にもうひと工夫欲しいですね。内容の良さを充分に発揮しきれていない気がします。

ジェンダーや姫と呼ばれて立ち上がる   山口あずさ

特選:秋 

秋:男女雇用均等法について、女に勝手な所だけ均等を振りかざす面が時に見かけられますが、それを痛烈に皮肉っているのかなと思いました。女として悔しいけれど女の一面を良く捉えていると思います。
満月:わかりすぎ。こういうテーマは「わかっ」てもそこにビリッと毒が効いてやがて、うぐぐぐわ〜〜〜となって欲しい。実は姫のつく苗字知人がいて、彼女はジェンダーにかかわらず「姫さん」と呼ばれれば立ち上がるのだ。
あずさ:<自解>鈴木水南子さん(セックスワーカーのためのピアカウンセラー)からお話を伺ってできた一句。
隆:六句目でした。済みません。

風邪流行るお局さまは定時なり   和田満水

特選:景琳 

景琳:お局様じゃなくても定時の不景気。
満月:よかったですね。のびのびできて。
あずさ:お局さまが定時なのはいいけど、風邪流行るはつまんないのではないかしらん。

紫木蓮あります二度寝すんなりと   宮崎斗士

秋 安伸 

秋:最後の一句はすごく悩みました。三寒四温しながら春は暖かく落ち着いてきますが、すっかり春が定まってから咲くのが紫木蓮です。そしてその姿形のたおやかさが「二度寝すんなりと」と、しっくりしていてどこにも無理が無い。飛躍はありませんけど、季語がとても生かされてい
満月:「あります」とは?すんなり二度寝したことと紫木蓮はどういう関係か??
安伸: 紫木蓮あります二度寝すんなりと「あります」というとぼけた言い方が効果的。
健介:「あります」がよくないと思います。

システィーナシスティーナ真夜中の菫の交尾   満月

特選:あずさ 

満月:おいおい、さらじゅりんの二番煎じをやるなって。え、作者が同じ?−しょーがねーなー、それ、自己模倣ってやつだぜ。(自解ではない)
またたぶ:「菫」てーと、もしや「アヌス」?
健介:「菫の交尾」には興味が湧きませんでした。
あずさ:菫の交尾、いいですね。システィーナシスティーナもなんだかレズビアンっぽい。

万国旗うなだれてゐる余寒かな   圓水

健一 しんく 

満月:余寒とうなだれるがいまいちビシッと響き合わないのだ。余寒どころかなまぬるい。
しんく:うなだれと余寒がつきすぎかとも思いましたが、寒いニューヨークを思い出させてくれる句。
健一:「余寒」はつきすぎだと思います。「うなだれてゐる」というのと。「万国旗うなだれてゐる」は面白いと思いました。
あずさ:それはね、風がないからなのよね。暑さ寒さの問題ではない、と余計なことを、つい。
健介:情景はよく分かるし、採れる句だと思います。

太郎の闇にテトリス降りつみ   またたぶ

特選:一郎 逆選:帽子 

帽子:ごめんなさい。俳句をはじめた翌月のわたしの句に、お粗末ながら「太郎の屋根にテトリスふりつむ浅き春」(1997年作)があります。『夜光』1号(1997年10月刊)およびNifty Serve俳句フォーラム5番会議室「現代俳句の部屋」発言番号2052「Lesson & other Sries 12inch edit」に発表しています。
一郎:心の闇にテトリスを降らしている太郎クン、ちょっとアブナいなあ。事件起こすなよ。
満月:超低調の今月の句の中にあって、やや作者の意思は見える。が意思どまり。
またたぶ:「グリコ男」に続き、またたぶの瓢窃容疑確定か?違うんですー。投句アップした直後に、FHAIKU ROOM5 #2052 でチノボーさんのテトリス句に遭遇したんです。故意じゃないとはいえ、チノボーさん始め、ご不快、ご当惑の方々、申し訳ありませんでした。しかし、私ってエスパー?
健介:「太郎」って、どちらの太郎さん?
隆:元の詩が強すぎて、玉砕です。

淫乱のいの形らの形   山口あずさ

安伸 りえ 逆選:秋 

満月:いの形もらの形もふたつの線が離れていて交わらない。ずいぶん淋しい淫乱だ。めとかゆならからまってそうだけど。ぬやむなら音感と相俟って相当やらしい。
またたぶ:語句の意味と発音が偶然の結び付きじゃなくて、「合ーてる」と言いたくなる語があるが、「淫乱」もその一つかもしれない。
りえ:そう言われるとすごくえっちな気がする、この字。「いんらん」って人前では書きたくないなあ。
安伸:淫乱のいの形らの形淫乱という言葉の抽象的なイメージをうまく映像化しえている。
健介:代々木忠監督のAV「いんらんパフォーマンス」シリーズを思い出しました。この句とはぜんぜん関係ないんですけど。
隆:五・七・五にまとまるといいのですが。
秋:こうゆう句はここに載せないで一人で楽しんでください。

1点句

魚の氷に上るやゆるむ石頭   後藤一之

帽子 

帽子:「ゆるむ石頭」が春のせい、という理屈が生じてしまうのが惜しいが、フレーズとしていただき。
満月:判じ物?氷と石というふたつの堅いモノ。魚が氷を割ることとゆるむという二つのほぐれること。どこに焦点を当てて絵を思い浮かべればよいのか。この句は碧梧桐唱えるところの「無中心俳句」などでは断じてない。

ありったけの豆全部ぶち蒔き鬼は外   林かんこ

光良 逆選:斗士 

満月:気持ちはわかりますよ。不況だし。でも「わかりますわかります、お互いにねー」というようなことを書いてどうするんです。ホントに豆撒いた?もし撒いてても本当のアニミズムの思いなどなくて、単に観念的な感じしかしない。机上の空ことば。まあ、俳句はみな机上の空ことばことばではありますが。
光良:ストレス解消系の句もたまにはいいですね。
斗士:気持ちはわかるけど・・・。
あずさ:峠谷さんが季語体感句会で、豆を冥王星まで投げつけるというのを作っていた。気持ちはよくわかります。細工が欲しいところ。
健介:字余りにしてまでそんなもったいないことしちゃあいかんでしょ。
隆:ありったけと全部は同じです。
カズ:鬼の内にしてほしかった。

採血の2本目の先春なかば   しんく

健一 

満月:二本目に何か特別の意味が?事実であったことと詩であることとは別の世界である。これは他の多くの句にも言える。
健一:ちょっと、春なかばの「なかば」が上五中七のイメージと重なるような気がしたんですが、それがなければ特選でした。

鳴ること忘れ電話凍えてしまひさう   さとうりえ

かんこ 

満月:どうして今月はイマジネーションの枯渇した句の大群なのだろう。日常の一説を日常のことばで日常的に書いたものを、単に短いから、五七五だからといって俳句とは私は呼ばない。
かんこ:なんともつらい、つらい毎日。
あずさ:なんか携帯が鳴らないって歌があったよね。
健介:仕方ない。凍えさせときましょう。

ひたむきのかたちたとえば地に這う蓬   秋

りえ 

満月:「ひたむきの・・・」の一節と「たとえば」以下が互いに互いを説明しているだけ。実業とかで有名になって色紙の揮毫を求められたとき書いてください。
またたぶ:好感はもてるけど、突いてほしいんです、意表を!
りえ:「かたち」は蛇足かもと思うが、地面にへばりついている植物を見ると、がんばれって思う。
あずさ:なんかずいぶんと惨めな姿なんじゃないかと。。。
健介:それはそのとおりなのでしょうけど…あまりにそのまんま過ぎるのでは?

理不尽一語で尽きず山眠る   北山建穂

肝酔 

満月:「一語で尽きず」は知のみの操作なのでおもしろくなくなった。視覚的・映像的な効果を盛り込めばよかった。これでは「山眠る」はとってつけただけのもっとも悪い季語の使い方。こんなことをするから季語が死ぬ。
肝酔:これは私のようなトンチンカンな選句評を毎回読まされている作者の心の叫びか!?理不尽をじっと耐えてくれているのだろうが、山は爆発することもあるから、気を付けたい。
あずさ:これって眠るというシチュエーションだろうか?
健介:言いたいことがよく分からなかったです。

陽炎にアリス超高速航行(ワープ)しネコ憤死   としや

うまり 

うまり:憤死とか爆死とかの江戸っ子テイストな言葉に弱いです。
満月:ネコ憤死でオチ付きの漫画になってしまった。
またたぶ:イントロ好きなんですけど…… 死ぬ猫「アリス」に出てきたっけ?
あずさ:ネコ憤じゃった、ネコ死んじゃった。
健介:「ネコ憤死」とは穏やかじゃないですねぇ。

鷹鳩と化すやちかごろ躁の妻   後藤一之

健介 

満月:え?鷹が躁で鳩は鬱なのでは?もしかして妻が躁だから夫である自分が鷹から鳩に?いとなさけなし。
あずさ:ようするに木の芽時かなとも思うが、けっこうおかしい。
健介:遣いにくい季語をとても上手く活かしていることに感心いたします。

大枯野まだ恋をする積もりなり   肝酔

景琳 

景琳:枯れても,恋はあり。
満月:どうぞ。
あずさ:だれが?
健介:特に「大枯野」でなくてもいいし、とにかくそういうもんなんじゃないかなぁ。

リリーフは放言ルーキー雲の峰   桜吹雪

光良 

満月:マツザカッ!、マツザカッ!
健介:彼の場合あの程度だったら「放言」という程のものでもないと思うよね。

春一番待ちきれなくて捨てる過去   すう

景琳 逆選:健介 

景琳:待てぬ春がよくででてる。
満月:「過去」にすると現実の論理で説明がつくので、詩的ショックよりああそうですかになってしまう。
あずさ:春が待ちきれなくて、過去を捨てたってか?
健介:一見解りそうなんだけど…考えてみるとずいぶん妙な感じのこをお言っていて、だんだん分からなくなってくる。でも気になる句。ゆえに逆選。

ジャイアント戦う愛に冬の幕   城名景琳

カズ 逆選:としや 

としや:その通りだけど、プロレスファンの私としては、馬場さんの具体的な描写がほしいところです、アップァ〜。
満月:標語。G.馬場さんのお葬式のキャッチコピーにどうぞ。
あずさ:ジャイアント馬場は、子供たちに指をさされて騒がれると不快は顔をしたと新聞の記事にあった。巨人は巨人であることをあまり喜んでいなかったのかもしれないと、ふと思った。
健介:かすかに解るような…でもやっぱりよく分からない句ですね。
カズ:おもしろい、馬場さんですよネ。

銭湯で蒲鉾蒸し上がる二月   千野帽子

景琳 逆選:光良 

景琳:蒲鉾の2月が変。
満月:銭湯−蒸し上がる、蒲鉾−蒸し上がる、両方つきすぎ。二月にも何か必然があるのか。ただ二月だったからという感じしかしない。
健介:何だかあんまり面白い感じがしなかった。

その他の句

てらてら黒い溜まり水胎動す   うまり

満月:てらてらは胎動しているときのうごめきを表現できていない。むしろ静かにたたえられ、光の力で活かされているよう。胎動するものにはもっとちがうオノマトペが選ばれて欲しかった。
あずさ:エイリアンが出てくる?
健介:えッ、マジっすか?

立春はじまる恋のチョコ選び   城名景琳

満月:POP広告にどうぞ。
あずさ:バレンタインデーのチョコセールがはじまったということでしょうか。で、それがどうかしたのでしょうか。
健介:どうせ僕にはくれないんだし…俺は知らんよ。

携帯の#(シャープ)付く声合格者   和田満水

満月:ちょっとした思いつきだけ。こんなのに点がはいるんだろうなあ、最近の青俳は。
あずさ:絶対音感がないので、よくわからない。相対音感もものすごーくあやしいわたしです。
健介:携帯電話を持たぬ私には意味が分からなかった。

生かされて生きるとは冬薔薇である   秋

満月:道句。つまりこの場合、仏教のありがたさを書いた「お言葉」の範囲から詩へと飛躍しきれていない。仏教的共感は呼ぶでしょう。
あずさ:美しくてけっこうなことです。ナルちゃん俳句。
健介:<○○とは△△である>という言い回しの句にはかなり飽き気味の感ありです。

胸の雑音 三寒の夜   カズ高橋

秋:充分内容は分かるのですが、あえて字足らずにしているのでしょうが、副詞かなにかはいるとぐっと味が出るように思いますが。
満月:実際の胸部疾患の雑音だとしたらこれほどおもしろくない句もない。なにか思い屈するところを描こうというには書ききれていない。
あずさ:精密検査した方がいいよ。

京畳男が攻める歌留多かな   足立隆

満月:攻められているのは女?それが男だったらわびしくていい。
あずさ:男が畳の上で攻める、バレ句かと思わせてなあんだ歌留多か、というだけの句。
健介:「京畳」と言ったことが活かされているのかなぁ?…

喉元のやうな春泥より小石   大石雄鬼

満月:「のやうな」は何だろう。春泥が喉元とイクオール?語順や構成はこれでいいのか。
あずさ:喉元のやうなというのは、どーゆーことなのだろう。喉仏でもないみたいだし、いったい何が言いたいのか不明。

着ぶくれるとは首隠すこと生きること   田島健一

満月:へーそうなんですか。
あずさ:猪首ってこと?
健介:「生きること」とまでは少々余分な感じかなぁと。
隆:確かに、こういうことかも知れません。

燃えさかる夕日くっきり寒の入り   林かんこ

満月:絵葉書。「燃えさかる」が定番的言葉使いだから。
健介:これって<寒夕焼>を説明しただけでしょ。

田螺鳴くアクアリウムや地下鉄道   うまり

満月:三つのイメージの展示会。
健介:「地下鉄道」というより「地下の駅」では?
隆:選外ですが、これも選したい句です。

宿酔いのゆふべの夢の後背位   さとうりえ

逆選:満月 

満月:後背位を宿酔いの夢の中でしかできないか・・人間は獣だよ。ああ、去勢の王国・・・・ゆふべの夢「という」後背位だったりすると、淫靡でやらしくて春でGOODなんだけどなあ。
健介:そういう夢は宿酔ではない時に見なさい。

裸がやせている   カズ高橋

逆選:健一 逆選:一之 逆選:しんく 

秋:作者としては意図があるのでしょうが、分かりません。
満月:ギスギス句。服が着膨れている方がずっとおもしろい。もっと思いがけないものが痩せていることを発見してくれたら読みたいと思うかもしれないが。
しんく:この場合、何の裸とか、どのようにやせているとか言うと語りすぎなんでしょうか?
健一:この句は一番前にあったので、とくに目についたんですが、短いのはいいんですけど、この句は「裸」と「やせている」がすべてなのに、この二つの言葉がつきすぎているということではないかと思います。
健介:だから何なんだッ!と私は思いますが…
隆:自由律は俳句の外の分野では、と常々思っています。
あずさ:「脱ぎ太り」の方が笑える。