第20回 青山俳句工場向上句会選句結果

(長文注意!)

今回の工場長題は「不」。
否定の意を含んだ語よりも、人名として読み込んだ句の方が成功したような感がありました。真っ正面で取り組むのは難しい語だったのかもしれません。
つっこみ句会では「階」の読み方を巡って侃々諤々。
「国語」の勉強になりました。^^!
それでは第20回、完全バージョンをお送りします。

向上句会とりまとめ:山口あずさ


投句:宮崎斗士、千野 帽子、中村安伸、白井健介、後藤一之、満月、凌、いしず、桜吹雪、しんく、明虫、またたぶ、越智、岡村知昭、杉山薫、山本一郎、小島けいじ、けん太、城名景琳、摩砂青、足立隆、朝比古、鉄火、丁子、室田洋子、夜来香、志摩 輝、ぴえた、柚月まな、山口あずさ


全体的な感想

景琳:今回他にも寸評したい句はたくさんあった。いつもはそんなに無いのに。奇句変句が多いようで,大変わたしの好きな句が,多かった。
けいじ:題が”不”ということで、どんな句が出てくるかと思いましたが、案外(?)安直なものが多い気がしました。こんなものなんでしょうか?
ぴえた:いっぱい楽しい作品があって選ぶのに迷いました。あ〜面白かった。
洋子:「不」って色々ありますね。自分のは、とって付けたようだなと反省しています。
まな:お題「不」はいいイメージの言葉があんまりなくて、むつかしかったように思います。今回のリストを一見したとき、「おおー」と思ったんですが、選ぶのはやっぱり大変でした。後になってふと思い出すようなインパクトのあるものも結構あったのに、いいな、と思うものを選ぶとなると、??という感じでした。
けん太:いつものことですが、全体的に理屈っぽい感じがしました。それに緊張感が不足してますよね。でも、愛着のある句はありました。なつかしいというか、日向のにおいがするとか。そういう句を今回はセレクトしました。
:課題「不」が消化不良のまま句になっている。
満月:ごめんなさい、今回はくたばってあまりコメントつけられませんでした。ところで結果が発表される頃はもう2000年?生きてるのかなあ。。。
桜吹雪:すみません。今回は感想が書けませんでした。とり急ぎ選句のみお願いします。皆様ごめんなさい。
:不二家がでるかなーと思ってたんですが、不比等、不二子。一番多いのは「不倫」ですか。なるほど。今回もろ演歌っぽいのが多いのはなぜ?
:いつも思うのですが、一句を読んで誤りなく句意を読みとってくれる人が一体どれほどいるのでしょうか。そのくせ高点で選ばれた句を読むと、なるほどと納得することが珍しくない、矛盾のようなものですがそれが実感です。やはり修行が足りないと言うことでしょうね。
またたぶ:今年も毎月楽しみました。選評読んで、う〜んと気付かされたこともあれば、「これは絶対譲れん」と一人頷いたことも(笑)。special thanks あずささん
知昭:「不」の句はなかなかに苦労のあとが見えましたね(私のやつのひどいといったら……)選句した後も読み返してみたい句がいろいろありました。
:どうやらこの句会回数を重ねることによって、ある種ひとつのスタイルに固まって来ているように感じる。自分のそのスタイルに組み込まれてしまっているようでもある。形が出来ることの良い場合と、そうでない場合があるが、あくまでも自由であることをこの句会にもとめるとすれば、最近の傾向は危機である。従って選句をするにしても、どんぎりの背比べの中からの選句であり、10日の后に選をすれば違う結果が出るであろうこと、明らかである。
健介:年末へ向けてますますご多忙の折、コメントはあっさり少なめに、が宜しかろうと思います。来年こそは“つっこみ句会”にヒールの覆面レスラーで乱入の予定(?)

8点句

大枯野人の出てくる穴がある   後藤一之

特選:満月 特選:一郎 特選:けん太 朝比古 まな 

まな:タヌキとかじゃなくって、人がでてきたら・・・やですね。それとも埋まってたのでしょうか。それはもっとイヤ。でも大枯野にならあるかも。うちのそばには、枯れた原っぱがいくつもあります。
けん太:「穴」は坪内稔典の素材であるが、何か野人が出てくるようなでっかい感じがとても気に入りました。なんとなくおかしみもあって、楽しい句です。
一郎:「人」を小馬鹿にしているところがよい。
満月:どんな穴だろう。大きな虚無のような、楽しい賑やかな穴から突然枯れ野に放り出されるような。不気味なような、肉感的なような。深い川柳として読みたい。・・・川柳とは読みかもしれないな。
あずさ:原人か?
つっこみ!
あずさ:この「人」、きのうふと思ったのだけど、ロールプレイイングゲームのアニメだったりして。もしそうだったら、イメージがぜんぜん変わるよね。 この句自体は洗礼者ヨハネみたいな感じもあるけれども、選句評読むと、皆はどんな人かよりもどんな穴かに注目しているのかな?
7点句

行方不明の鍵が集まる十二月   桜吹雪

特選:斗士 特選:まな 知昭 またたぶ けん太 

まな: 鍵以外のものもどんどんでてきますよね。どうして探し物って、探してるときには出てこないのに、違うものを探してると出てくるんでしょう。
けん太:なんとなくいろんなものが集まってくることって、日常でもありますね。で、12月には鍵が集まってくる。少しそこは理屈を感じてしまうのだけれど、イメージがいくつも広がっていくので○にしました。
またたぶ:背景にドラマが感じられる。十二月らしい。
斗士:着想の妙。「行方不明の鍵」とは、いいところに目をつけた。「十二月」も、なんだか納得してしまう。
あずさ:何の鍵だかわからない鍵って不思議だよね。そういう意味では鍵穴不明の鍵の方が面白いかも。
つっこみ!
あずさ:無くなった鍵がたくさん集まることにより、どれがどれだかわからなくなって、より一層混沌としてしまう。この十二月は動かない、ということでしょうか。神無月だったら、付きすぎになるのか?

冬階に藤原不比等が咲いている   満月

特選:安伸 特選:ぴえた 薫 洋子 明虫 

明虫:なんでも咲かせるのは安易だと思うけれど、冬階の藤原不比等がちょっといい感じ。
ぴえた:意味も何もよくわかりませんが、ぐっと心をつかまれるので、放してくれないからに選びました。
洋子:よくわからないのですが、「藤原不比等」に惹かれてしまいました。
薫:「不」ではこれが一番でした。冬階と不比等の取合せも効いているし、簡潔明瞭で印象鮮明。
またたぶ:狙いは好き。「藤原」までダメ押しする?
つっこみ!
あずさ:もしかすると、大恥をかくことになるかもしれないが、勇気を持って書こうと思う。「冬階」って、何?どう読むのかもわからない。。。ーー;
満月:階段の階ですね。「きだ」。きたと読む人もいるかも?意味はやっぱり冬の階段でしょうね。夏の階段も秋の階段も春の階段も、まあそれぞれにあるんだろうけど、やっぱり冬の階段の寒さ。これでしょうか。
この句、ふゆきだ、ふじわら、ふひと、と三つ「ふ」音が重なっているところが何か理屈でない惹起力を持っているのでしょうか。これがふたつでもよっつでもコケた気がする。
ぴえたくん:わたしはこの作品を特選に選びました(はずです)。が、わいわいがやがや楽しい気分で「これに決〜めた!」と選びはしたものの、実際は何にひかれたのかさっぱりわからなかったのです。「ふ」がみっつだから理屈でない力が生まれたのですね。納得しました。
なんで人間がしかも古代の人が咲くのん?と思われた方も多いのでしょうね。不思議な作品ですね。
ぴえは短歌の大先輩に「きだ」を教わっていたので、実はひそかに読めていたのでした\^o^/
またたぶ:「ふゆしな」ちゃうのーー?!!ごっつショックです、私には。じゃ「高階」は「たかきだ」?
満月:えっとお、階はだいたい「はし」と読むらしい。で段が「きだ」階段ならぬ段階と書いて「きだはし」「きざはし」。短歌の方では普通そう使ってあると思うけど。高階は「こうかい」では?高階は高い階段じゃなくてビルとかの高い階という意味に使ってあると思う。
あずさ:「冬階」を「とうかい」かな?と思い、これって、冬の階段だろうか?もしかして、植物の名前だったらどうしようなどと思っていたわたしは実際アホですが、ウィンドウズについているCD辞書<漢字源>を引いてみました。
−−【階】《常用音訓》カイ《音読み》 カイ(漢)/ケ(呉)《訓読み》きざはし/はし/はしご/のぼる/しな《名付け》 とも・はし・より
《意味》1.{名}きざはし。高さを等分して、きちんとそろえた段。「階段」「没階趨進=階ヲ没セバ趨リ進ム」〔→論語〕2.{名}はし。はしご。高さを等分したはしご。「階梯カイテイ」3.{名}物事が目的・結果に向かって、一段一段と進む段どり。物事の順序・等級。「乱階」「階次」「段階」「乱之所生也、則言語以為階=乱ノ生ズル所ハ、スナハチ言語モッテ階ト為ス」〔→易経〕4.カイス{動}はしごをかける。「猶天之不可階而升也=ナホ天ノ階シテ升ルベカラザルガゴトキナリ」〔→論語〕{動}のぼる。一段一段とのぼる。順序をおって進む。順序をおって進める5.。「而階太平之治=シカウシテ太平ノ治ニ階ル」〔→韓愈〕6.{名}しな。積み重ねたものの、上下にわけたもの一つ一つ。〈類義語〉→層。「階級」「階層」 7.{名}頼りになるもの。「漢亡尺土之階=漢ニ尺土ノ階亡シ」〔→漢書〕8.{動}ととのう。調子がそろう。▽諧カイに当てた用法。〔国〕たてものの階数をいうことば。《解字》 会意兼形声。「阜(土盛り)+音符皆(きちんとそろう)」。《単語家族》 諧カイ(音がそろう)−偕カイ(そろっていく)と同系。−−
ところで、「きだ」なんてどこにも書いてない。。。なんてことだろう。ーー;
満月:うーん、「きだ」や「きざはし」は和語(やまとことば)ですから、むしろ古語辞典や広辞苑のような大辞典を見た方がいいんじゃないかと思いますが。
で、広辞苑第四版。
−−きだ【段】(1)わかち。きれめ。わかれめ。(後略)
きざはし【階】昇降するために造った段。階段。きだはし。
はし【階】庭から屋内に昇る階段。きざはし。あがりだん。
しな【品・科・階】(1)層をなして重なったもの。(イ)坂道。階段。階層。−−
とても古い古語辞典。小学館新選古語辞典(昭和43年七版)
−−きだ【段】〔名〕切れ目。「十拳剣を乞ひ度(わた)して三──に打ち折りて」<記・上・誓約>
きざはし【階】〔名〕階段。段。「きだはし」「はし」とも。「御前の──をなからがかり降りさせ給へるところに」<平家・四・空鳥(←そらがへんでとりがつくり)>
しな【品・級】(4)階段。きざはし。「御階(みはし)の中の──のほどに居給ひぬ」<源・若菜上>−−
こんな具合です。
もともと太古の建築様式の、(例えば伊勢神宮みたいな千木のあるような)高床の建物に上ってはいるための白木の外階段だと思います。それが寝殿造りのような中世の建築にも受け継がれて来たようですね。今でも皇居や神社、お寺などにはありますね。「しな」は階段のどこかの一段を言ってあるみたいですね。
またたぶ: 「不比等」からいって和語として読むのがスジでしょうね。というか格調高い。「段」はともかく、「階」の方を「きだ」と読むのはアリなんでしょうか?うちの漢和はすごいしょぼくて載ってないんですが。
満月:多分あて読みじゃないでしょうか。歌関係の世界は見てくれの美意識強い(^^;ですから。
帽子:読みはともかく「冬階」という語は存在しているのでしょうか。当句会でも「春会話」とか「秋ごはん」とか苦しい「季語+普通名詞」をよく見かけるのですが。萬葉あたりにあるのかな。折口の萬葉集辞典には「段」と書いて「きだ」の項がありますね。藤原不比等と萬葉なら時代的にはそれほど遠くないような気も…(うろ覚え)。
満月:そうですねえ、「冬階」が語として存在しなければそういうことになりますね。一応、萬葉はこのツリーが燃えて(^^;きてからざざあ〜〜っと目を通しました。・・・ありませんでした(私の焦点の合わない目が拾えた限りで)。古事記はまだ確認していませんが。時代はたしかに近いんでしょうね。たしか日本書紀を編纂したのが不比等だという説があったかと。

ボクシングジムへ卵を生みにゆく   凌

満月 知昭 青 景琳 薫 輝 あずさ 

景琳:かなり想像力たかめられました。今度ジムみたら「卵」って印象強かった。
満月:どこに卵を生みに行ってもいいんだけど、選りに選ってボクシングジム。この人物が実際どんな動作をするのかを見たい。
薫:生む、ですからね。「生むべし、生むべし、生むべし!!」
輝:主語が不在のところが、曰く言い難し。
あずさ:どうしてこういう感覚がワカってしまうのだろう。コミュニケーション不全を解消するために、これがワカることの謎が解明できればいいのかも。。。なんてこと考えたら、頭おかしくなってしまうかもしれないが。。。ボクシンググロープって、形状が卵っぽいと、言えなくもないけど。
つっこみ!
あずさ:ボクシングのグローブもそうだけれども、パンチングボール(って言うのかな?)も卵っぽい。なんかボクシングジムって、そこらじゅうに卵を連想させるものが詰まっているような気がする。男は実はみんなはらんでいて、ボクシングジムで卵を産み、夾雑物を捨てるのかもしれない。
ジョイス・キャロル・オーツという女性が書いた『オン・ボクシング』というたいへんかっこいい本があるのだが、その中に、「ボクサーとダンサーは同じである。すなわちウェイトである。」と書いてある。
すなわちウェイト! 夾雑物をすべて取り去った、つまり余分な体重を絞りきったウェイト!
運動神経のいい人に生まれ変わって、ダンサーか、もしくはボクサーになりたい。
それにしても、死ぬまでに一回、ボクサーの恋人を持ちたいものだ。

長い鏡がありまして長い列車が通ります   摩砂青

特選:いしず 特選:あずさ 知昭 安伸 満月 

いしず:ポール・デルボーの絵を連想しました。
満月:ちょっと間延び。「ありまして」はしゃべりすぎ。「通ります」とのどちらかを思い切らないと作者が情緒に酔っていることしか伝わらない。自由詩の冒頭なら展開のしようもあるが、俳句はこれで終わりなのである。しかしながら、俳句であるといかんを問わず、なんだか好き。
またたぶ:内容は好きだし、定型保守派でもないけど、これはちと冗慢と思う。
あずさ:この絵はすごい。頭がくらくらした。
知昭:リズムの良さが内容を引き立たしてます。バランス難しいけど見事な技。
健介:可笑しみはある。けれど、俳句と呼んでいいものかどうか……疑問。
つっこみ!
あずさ:鏡の国というのは不思議だ。きっとそれほど大きくないのだろう。鏡を長くしたからこそ、長い列車は通れるのだ。でないと、鏡は平気でいろんなものを省略してしまう。
ぴえたくん:一読して「???」と思う作品でも他者の意見を読むと、改めて「ほっほう!」と感心することもあるけれど、この作品は破調が効果的とも思えない、どうにもわたしには理解できない作品です。わからない。。わかりたい。。
凌:形式に言葉をぎゅっと詰め込んで、そこからはみ出す「やむを得ないもの」とは違う長さをこの句に感じて、入選にはしませんでしたが、嫌いな句ではありません。まだ汽車といわれていた頃、D51がなが〜い貨物列車を引っ張っている光景はいつまでも見飽きることがありませんでした。そして今でも長い夜行列車が通るたびに、この列車は現実を通りすぎて、どこか異界へふっと消えてしまうのではないかと思うことがあります。「長い鏡」は現実を非現実へ裏返す夢の鏡に違いありません。
あずさ:わたしの中では、鏡は硬質で平板な形を持っており、これが長くなっても鏡そのものは動きのない板なのである。が、ここを長い列車が通ることにより、列車が鏡ごとねじくれるような気がした。長い鏡と長い列車はイメージの中で溶解し、どこか異界へと消え去って行く。わたしの映る余地はないのだ。いや、鏡の中のわたしも列車とともに溶けてしまったのかも。
満月:これはやはり自由詩だと思う。「ありまして」「通ります」は俳句の切れの論理では無理なような気がします。リズムも構成も、そして肝腎な一句を書く意識そのものが、俳という定型詩の求心力や遠心力の影響下にない気がする。ここを具体的に書くのは非常に難しいのですが。しかしながら、一編の詩として(希望的には2行表記してほしい)それなりに魅力的ではあります。ただし中也のぱくりがクサすぎて読者をこれ以上騙せない(納得させられない)でしょうが。
帽子:なるほど。自分がこれを採りたくないと思った原因がわかりました。無意識に中原中也的なものを感じとって忌避していたのですね。やはり採らなくてよかったと思う。
ぴえた:お久しぶりに拝見してみたら三人さまのご意見が(^.^) おかげさまで作品の魅力を感じることができました。ありがとう。2回の「長い」と「ありまして」と「通ります」に抵抗を感じて、魅力を見逃したのは惜しいことだったと思います。

もうすっかりクリスマス棄ててきてね   杉山薫

特選:鉄火 特選:青 特選:輝 明虫 逆選:健介 逆選:ぴえた 

明虫:妻が玄関あたりで夫に声をかけている、普通の生活かと思わせて。但し一部のことばに語法の違いのある。。鏡の中のアリスの世界?
ぴえた:クリスマスを棄てるのか、何を棄てるのか、すっかり棄てるのか、すっかりクリスマスなのか、ぴえは混乱してしまいました。
鉄火:こう言われてしまうと、自分の中に何か捨て残したものがあるような気がしてしまう。呼びかけが効いていると思う。ただ、クリスマスを棄てるように聞こえてしまうのが難か。
輝:どこもかしこもジングルベルでやかましくてしょうがない。
青:すっかりクリスマスの気分にさせて、突然価値転換させるうまみ。
あずさ:生ゴミをですか?
健介:何を言いたいのかよく分からんかった。
つっこみ!
あずさ:人皆発情するのがならいのクリスマスである。何を棄てるのだろう。発情性廃棄物?

6点句

踊り子の寒林へ打つタンバリン   朝比古

特選:隆 特選:洋子 桜吹雪 一郎 

洋子:幻想的で美しい。タンバリンの音が聞こえてくるよう。ハンガリーのチゴイネルの娘。
一郎:「の」を主格とすると、きれいに決まっているお上手な句。「の」を所有格とするとちがった面白さが生まれるが、タンバリンが意味をなさなくなるか。
隆:この句は全60句の中の光である。寒林とは云えど、タンバリンを打つ踊り子の動きと音が、鮮やかによみがえる。

魔はいつも右からさして芒ばかり   千野 帽子

特選:知昭 まな またたぶ 夜来香 満月 

まな:「魔」ってなんだっけ、と思ってしまった。なんかしようと思ってる右隣でちっさな悪魔が「やっちゃえやっちゃえ」っていうのかもしれない。でも「すすき」でなくてもいいのかも・・・。でも、「いつも」が、なんとなくいいような気がするので。
満月:魔がどっちから差すなど考えたこともなかった。思えばMANO挿し具せ?というものが私にもあったような気がする。<芒ばかり>がぼうぼうたる芒野原のきらめく白穂の中で迷子になっているようでありながら、幸せにひたっているようでもある。魔の差すのをさえ楽しむ部分を持っている人生肯定的な句だ。
またたぶ:「左」だと「いかにも」だが、この発見は買いだなー、たとえ「芒ばかり」に「予想通り」感があるとしても。
夜来香:なぜ右なのかは不明ですが、確かに魔というのは同じ方向からさしてくるかもしれません。そしてつい調子にのって振り向くと、痛い目にあう。
あずさ:<右から>に頼りすぎのような気がする。
知昭:「魔がさす」という言葉、いい時には使いませんね。何故か同じパターンで失敗してしまう人の哀愁が芒ばかりの世界とよくつり合ってて、何故か笑えました。
作者陳謝:この句会とメンバー重なってるべつの句会にも、うっかり同じ句を出してしまいました(これで二回目です)。関係各位にお詫び申しあげます。

不眠とはサーモンピンクの碁石いっぱい   宮崎斗士

凌 鉄火 桜吹雪 安伸 まな ぴえた 逆選:薫 

ぴえた:そうそう!
まな:昔、テトリスのやりすぎで、寝る前につむった目の中にいっぱいあれがでてきて困りました。サーモンピンクもきっとありだと思います。でもピンクの碁石で碁はどうでしょう。目がチカチカ・・・。
鉄火:碁盤を離れた碁石って確かに気持ち悪い。
凌:「とは」とつなぐから句がまとまってしまう。「サ−モンピンクの碁石」なんて勝手なこと言うんだったら、もっと無責任に言葉を踊らせてほしい。
薫:逆選は、現在の自分の判断基準において選はできないが、なにかを感じさせてくれる句、に謹呈している。って、誰も欲しくないか・・・饒舌でしかも舌足らずさがあざといような魅力的なような。
またたぶ:「とは」は濫用せざるべし。ポップですが、「碁石」はちょっとムリじゃないかな。

5点句

饅頭の湯気になりましょ先斗町   桜吹雪

隆 景琳 安伸 ぴえた けん太 

景琳:「ましょ」って,言葉の表現が不思議と饅頭・先斗町にあう。
ぴえた:関西人なら「お饅頭の湯気になりまひょ先斗町」になると思う。なあんか、しあわせ〜な気分になれる作品で好き。
けん太:京都に25年住んだ私の気分では先斗町のイメージってこうなんですよね。三条(または四条)へ出るすぐのところでほわっと消えてしまいたくなるんですよね。
隆:京都のよいイメージが伝わって来ます。

人形の誰にも似ない蜆蝶   明虫

特選:桜吹雪 一郎 またたぶ 帽子 

一郎:「誰にも似ない」という全否定形容がいい。これはオリジナル?それとも、よくある表現なの?誰か教えて。
またたぶ:人に似せて作ったのにね。仰せの通り。「蜆蝶」の効き具合は?ですが。蛇足ながら「人形のだれにも抱かれ草の花/大木あまり」が好きです。

本日はお日柄も良し狐罠   ぴえた

特選:健介 一之 安伸 斗士

またたぶ:「罠」を人が仕掛けたものとして、人には幸、狐には死。そこまでかみしめると味わえる。
斗士:一風変わったほのぼの感が心地いい。「狐罠」うまく持ってきたなあ。
あずさ:狐の嫁入りってこと?
健介:“意外性”が程良く“その気分”を醸し出していると思う。

山茶花や騎馬戦のもう終わるころ   宮崎斗士

青 健介 景琳 またたぶ あずさ 

景琳:山茶花のかきねって,騎馬のような再認しました。
またたぶ:聞き飽きたような語調を「騎馬戦」が見事に蘇生させた。「山茶花」も合いすぎ。
青:ノスタルジックなよろしさ。
あずさ:伝統も悪くないと思わせてくれる一句でありました。
健介:「もう」が作者の位置を判りにくくしている感じなのが少々引っ掛かるものの、こういうレトロな句も私は好きです。

山眠る少し僕の話をしよう   小島けいじ

特選:明虫 朝比古 満月 ぴえた 逆選:一郎 

明虫:不動の山塊と、小さいが活動する自分の対比。デリケートな「僕」が動き出す。
ぴえた:他愛も無いおんなのこの長話をやさしく聞いていてくれた人が、ふっとこんな風に言ったら、ぺちゃくちゃ話していた女の子も急遽女性に目覚める、心奪われる、だろうなあ。。。と迷いました。どっちも好き。
一郎:こういう句は、作ってから日を置いて読み返すと結構恥ずかしかったりする。
満月:おもしろいけど一回きり。
またたぶ:ナニさま?「ボギー」って呼んでほしいの?と思いつつ、新しさはあるかも。
あずさ:で、それ聞かなくちゃいけないわけ?はっきり言って、ナルちゃん俳句。

5点句

ウィンクして月へ高飛び峰不二子   室田洋子

斗士 あずさ 凌 健介 

凌:入れたくなかったのに、乗せられてしまったという感じ。
またたぶ:「まんま俳句」の中では悪くないのでは。
斗士:昔、峰不二子が嫌いだったが、つくづく「子供だったなあ。。」と思う。大人の男はルパンを見習うべき。
あずさ:不で、峰不二子! いいっす。
健介:不二子「カレ相当の女っ誑(たら)しよ」クラリス「捨てられたの?」不二子「捨てたの」という遣り取りは味があった。増山江威子さん(バカボンのママ・如月ハニー…等の役)の声も決して悪くはないんだけど、やはり最も旧いシリーズの二階堂由希子(字が違っていそうで申し訳ないが…)さん演じる不二子ちゃんが色っぽくてエッチでカワイくて最高だったよねぇ…。この句の「月へ」というのは、あくまでラストシーンのお決まりの“でかい満月へ向かって文字通り高飛びする場面”をデフォルメした表現と解釈しました。今回の工場長題「不」をこう遣ってくるとはタダ者ではないですね。藤原紀香なぞに実写版の峰不二子役をやらせるなんて話、モンキー・パンチ氏はOKしたみたいだけど、俺は反対だねッと一応言っておく。

悪い冗談としての飛び込み用プール   山口あずさ

特選:けいじ 桜吹雪 隆 

けいじ:悪い冗談と言い切るところがいい。
またたぶ:形は好きだが、中途半端なブラックに抵抗あり。
健介:「ホントはオイシイ思うとんねん」っていう、それってやつ?

マスクのゴム伸びきつてゐる不倫かな   朝比古

隆 夜来香 健介 いしず 逆選:あずさ 

夜来香:不倫、不倫と言うけれど、そんなに刺激的でかっこいいことにも見えず、端からしたらけっこうだらしない関係ではありませんか。これを読んでもうやめようっていう人がいそうな…?
あずさ:げぇ〜。こんな不倫してる奴、嫌い。。
健介:作者はきっと“あの方”ですね……まぁ、こういうこともございましょうが…。
つっこみ!
斗士:この「マスクのゴム伸びきつてゐる」って、なにを表したかったんだろう。狙いがもうひとつ見えなかった。感覚としてこんな感じ、ということなのだろうか。。
凌:マスクのゴムとパンツのゴムとどう違うのか、ということは「マスクのゴム」が私にはよく見えないということ。それと「不倫かな」の「かな」が、よけい何か伸びきったゴムを引きずっているようなだらしなさを増幅しているように思う。この「かな」がなければ伝わってくるものはある。それとこの句から離れて、不倫という言葉の汚らしさ。しかし、この言葉を通して見てしまうから、男と女のごく自然な行為までも汚らしく見てしまうのではないか。SEX大好き人間としては、男と女がいる限り永遠につづくこの行為を「不倫」と称することを廃止して、せめて「姦通」を復活させてほしい。
あずさ:姦通!姦通罪なんてのがあったくらいだから命がけっすね。不倫罪がないからパンツのゴムが延びきったようなカンケーになってしまうのかも。やっぱり障害があるというのは大切なことなのか。。。。ところで、わたしの某友人は、妻と健全なカンケーを続けているらしい。不健全の間違いのような気もしないではないが。。。。ーー;
ところで、わたしはこの句は非常によくわかりました。要するに愛でも恋でもなんでもなく、ずるずるしたカンケーということだと思います。従って、句そのものより、そのようなコトの方に拒否反応を示して逆選にしてしまいました。大人なんか嫌いだいっ!と言いたくなるような汚らしい、だらしなーい不倫なんだと思います。そうまでしてセックスに執着する大人って、非常に気持ちの悪い生き物です。一生童貞の方がいいとさえ思う。ああ、気持ちわるぅ〜。
満月:そういうことの方に意識が行ってしまうのがこの句の最大の失敗なんだろうね。マスクのゴムが伸びきっていることと不倫の間には、頭で考えたらこんな喩えもある、という関係しかないような気がする。直感や皮膚感覚で読者が捉えられる部分がなくて、ただ大人の頭がふたつをアナロジーとして結びつけた、という印象。こんな事句にしてもらっても、、とつい思ってしまう。別に不快な句がいけないというのではないけれど。
薫:まっことその通りの感想です。単なるアナロジー、不倫を説明しているようにしか感じられなかった。掃除機のコードが伸びきったとか、ボタンを掛け違ったとかみたいなこといわれても。まだ「臍の緒を切り忘れた」みたいなほうがおもしろいかなぁ。不快な句が好き!な場合もありますよね。
チノボー:どうやら「不快」には2種類あるみたいですね。個人的に、好きな不快は「不快」、嫌いな不快は「不愉快」と呼んでます。この句は不愉快とは思いませんでしたが、ある程度達者な人が手抜きをしている気がして、あまりいただけなかったです。

3点句

柊のぎざぎざ辿る不惑かな   夜来香

凌 ぴえた けいじ 

ぴえた:痛々しい人生を通過してやっと40歳。なのかな? 40歳になって痛い思いをしてるのかな?どっちかな? でも好き。
凌:作者の思いは「不惑かな」で落ちつくところへ落ち着いた。
またたぶ:「不惑なのにまだぎざぎざを辿る」というようなリクツにとれてしまって、惜しい。

黄落を不惑の兄はスキップで   またたぶ

洋子 鉄火 朝比古 

洋子:「黄落」と「不惑」そして「スキップ」がすごくいいと思う。「黄落や」と切る方がいいと思うのですが・・・
鉄火:私には弟・妹の気持ちというのはわからないけど、兄ってちょっと不気味な存在なのかもしれない。惑わないところが怖い。
あずさ:兄、もしかして頭悪いのでは、と思ってしまった。すみません。

冬に入るとはポケットの増ゆること   白井健介

特選:一之 まな 

まな:ポケットの中身が増えるのですよね。ポケットの数もふえる?ぽかぽか暖まらないといけませんからね。

不時着の鶴の溶けたるベッドかな   後藤一之

特選:薫 斗士

薫:お題の「不時着」は効いていないような気がするが、鶴である。ベッドと言えば布団。布団と言えば羽二重の鶴模様。妖しい遊郭の雰囲気もあるしな。
またたぶ:お待たせしました。青山名物「鶴」句です。しかし「ベッド」はナンとかならなかったのか。
斗士:「不時着の」が要らないような気もするけど、「鶴の溶けたるベット」とはなんとも心憎いフレーズ。

木枯しや動機不純は直りません   鉄火

特選:凌 洋子 

洋子:直らなくてもいいと思う。思いっきり木枯らしに吹かれても!!
凌:それは誰でも持っている病だが「木枯らしや」に作者の位置が見えていい。
あずさ:バカは死ななきゃ〜、ですか?

軍隊が不意に貌だす葱畠   凌

明虫 一郎 一之 

明虫:葱のすこし青みを帯びて白い粉を吹いたようにしているところ、金属的なイメージ、剣のような形も軍隊の質感につながるのだろうか。軍隊が葱畠に現れたのでなく、葱畠に軍隊がイメージとして見えた、と解した。とすればふいに、が必要だっただろうか。
一郎:推敲の余地はありそうだが、面白いテーマ。葱畑だけでは顔を出すきっかけとしては弱い。
またたぶ:社会派を意識する俳人が一度は詠みそうな句。
あずさ:つげ義春?
2点句

懐に不を抱きしめて山眠る   小島けいじ

洋子 けん太 

洋子:不満、不条理、理不尽色々な「不」を抱いていると思う。
けん太:人間誰もが不を抱えて生きている。そんなイメージがよく出ているのでは。やっぱり不は負なのでしょうね。
またたぶ:「しめて」というもろな擬人法に引っかかりを感じた。他の点では「できている」句。

土不踏場所譲り合ふ夜長かな   丁子

あずさ 知昭 

あずさ:土踏まずって、遠慮深い感じがしますね。それにしても何の場所を譲り合っているんだ?

尽日はカ行のなかに居ります   山本一郎

特選:景琳 

景琳:「カ行」に興味ひかれて,俳句らしからぬ俳句で変。でも,ういういしさがいいと思う。

縦糸と横糸のある紅葉山   中村安伸

特選:帽子 

あずさ:山全体が織物のようだということだろうか? それともこの縦糸と横糸には何か重大な秘密があるのか?

天皇の不確かなりし波の花   明虫

帽子 けいじ 

けいじ:”天皇”の表現には賛否あろうが、とりあえずこれは嫌いじゃない。

ウラン掘る筋肉冬の虹あまた   岡村知昭

帽子 薫 

薫:ウランシリーズ第2弾?「汗をかくって、素晴らしい」「あまた」って、いるかなぁ。

不要品ポスト凍て月を追いかける   杉山薫

輝 斗士

輝:そこら中何処でもお目にかかる風景で、いかにも寒々とした光景です
斗士:この哀感、好み。

不機嫌な雲の上ゆく熱帯魚   いしず

桜吹雪 一郎 

一郎:なんともいえぬ不安定感が好きだ。
あずさ:<不機嫌な>ではじまるのは面白い。が、それだけのような気も。。。

冬の雷眠れば眠りの真中より   満月

輝 いしず 

輝:はじめて冬の雷を聞いたときはびっくりしました。裏日本ではしょっちゅうのことですね。
あずさ:山眠るなんてゆう季語もあるくらいだから、冬と眠るは付き過ぎだと思うのよね。

猿の不死てふ銀色の廊下かな   中村安伸

青 いしず 

青:銀色の廊下というイメージから、猿の惑星へと飛んでゆく。

あたらしき毛布の中で嘘拭ふ   柚月まな

隆 夜来香 

夜来香:こうゆう嘘なら一晩寝たら忘れてしまうんでしょうね。だから寝具は清潔なのがいい。

笛吹くと鮎落ちてくる不器用に   またたぶ

鉄火 青 

鉄火:どことなく白土三平を思わせる世界だが、鮎はスマートな魚だという思い込みがあったので、「不器用に」と言われると新鮮。

時雨るるや捨て猫不妊手術中   白井健介

景琳 一之 

景琳:猫には健保がきかないので,思わぬ出費やら,不妊に時雨るるが,場景浮かんだ。

重心をはづしてしまう案山子かな   足立隆

鉄火 けいじ 

けいじ:絵が簡単かつコミカルで好き。
鉄火:この案山子が重心を外してしまうと世界のバランスさえ崩れるような気がする。
あずさ:重心の取り方をれれれのおじさんに習おう。

綿棒を耳に突っ込む文化の日   けん太

夜来香 明虫 逆選:凌 

明虫:文化なんてこんなもんかって。
凌:「文化の日」が動かせないとは思えない。
夜来香:文化の日って間延びしていますよね。ありがたい祝日なんでしょうが、なんだか暇。遅く起きて新聞でも読んでいたら、んん、耳がむずむずしてきて・・。
あずさ:昔、幼少の頃、耳掻きを耳に入れたまま歩いていて、よろけて壁に当たり、とても痛かった。祖父のところに泣きながら駆けて行って慰めてもらった。何かの真似をしたつもりだったのだけど、何の真似をしたのだろう。マグマ大使だったかな?
1点句

不知火と山田と岩鬼散紅葉   しんく

帽子 

あずさ:山田ってだれ?
健介:季語の“利き具合”がいまひとつ…。

堆(うずたか)く糸を真冬の不二へ運ぶ   千野 帽子

薫 

薫:ちょっと気取った感じだけど、好き。できれば定型で読んでみたかったような。言葉も無駄がないけれど、「運ぶ」は要るでしょうか?

不満ありぱしりと割りて青蜜柑   室田洋子

けん太 

けん太:今回選句したなかで、ひとつだけ調子が違うのがこれです。「ぱしり」「青蜜柑」から緊張感を感じました。今回の句の中にはそれが少なかったと思うのですよ。
あずさ:竹を割ったような性格。蜜柑を割ったような不満。。。

冬帝やいまだ現役スナイパー   しんく

健介 

あずさ:スナイパーって何だっけと思って、CD辞書を引いたら、「狙撃手、射撃選手」とあった。狙撃手が冬帝ではちょいと近すぎますね。
健介:長編アニメーション映画『ゴルゴ13』はベッドシーンが多くて、テレビで見ていた母に「何なんだか、そんなコトばっかヤッてんだねぇ」と“ツッコまれて”ました。

不老寿を願いながらも木の葉髪   城名景琳

輝 逆選:隆 

輝:当たり前のことを言っているようだが、その身になれば痛切な感じでしょう。
あずさ:ああしてこうしてどうなった俳句。どうせならスキンヘッドでどうどうと生き抜いて欲しい。

愛してる愛しています薄紅葉   越智

一之 逆選:桜吹雪 

あずさ:花占いべた惚れバージョン。

永遠の不良少年黄落す   山口あずさ

けいじ 逆選:安伸 

あずさ:飛躍が足りない。

不幸には耳かたむけて冬炬燵   夜来香

いしず 

斗士:上五中七の持っていきかたに抵抗あり。あと炬燵に「冬」は、いらないと思う。
あずさ:言っていることはいいと思うけど、<不幸には>では芸足らず。

肛門の皺より目覚む秋の声   丁子

凌 逆選:鉄火 逆選:一之 

鉄火:こういうことを見つめている視点がイヤ。
凌:この場合の「秋の声」は外からのものでないと困るけど
健介:“サナダせんせい”?
その他の句

貧神の不意打ちに遭う神無月   いしず

あずさ:10月にギャンブルしたら負けたってこと?

不倫とか君が代とか神無月   けん太

あずさ:「不倫とか君が代とか」が、いったいどうなったのでしょう。「不倫」と「君が代」の因果関係も見えてこないし。。。

愛憎の愛という字に聖誕祭   鉄火

あずさ:憎しみはクリスマスが終わってからにして、とにかく今宵は発情しよう!ってか?

今日よりは猫不在なる日向ぼこ   柚月まな

あずさ:猫はどこかに行ってしまったのか。それとも埋葬されたしまったのか。猫と日向ぼこっていずれにせよ年寄りくさい。

朱欒より不協和音の流れ来ぬ   ぴえた

あずさ:朱欒=ザボンでしたか。ザボンという音が不協和音なのかな。柑橘類は爽やかな印象だけれども。不協和音とのつながりが今ひとつ見えなかった。

進化論くま手に乗せた一の酉   城名景琳

あずさ:くま手と一の酉が付いてしまいます。進化論をくま手に乗せる(載せるかな)までは買います。

抱擁は不埒に千本今出川   越智

あずさ:千本って、もしかして、「〜をせん!」(=〜をしよう!)というのと掛けているのだろうか。。。だとするとたいへんつまらない。

不完全燃焼紅葉忌に眼り   岡村知昭

あずさ:眼りは、眠りの間違いか?

「し」のかたち「く」のかたち針葉樹林燃ゆ   摩砂青

あずさ:文字絵が作れそう。

冷まじき不倫の夢の寝覚めかな   志摩 輝

逆選:まな 

まな:「冬枕目覚むるまでの不貞かな」というのを作って、でもあまりにダメすぎて投句するのをやめました。おんなじことを考えてる人がいた・・・。

憂国忌国歌国旗ハ不文律   足立隆

逆選:景琳 

景琳:君が代,日の丸が昔っぽくでた句でした。漢字のあていいですね。
あずさ:不文律文に認(したた)め無粋なり
隆:「憂国忌国旗国歌ハ不文律」の方がリズムがよい。こちらに改めます。

空にサウルス遊ぶ日は体調不良が続きます   山本一郎

逆選:帽子 逆選:朝比古 

帽子:下品な七五調
健介:“加藤家 家訓”じゃないんだから……。(わかる人だけ笑ってやって下さい)

忘られぬSACHIKOベージュのコート行く   志摩 輝

逆選:満月 逆選:知昭 逆選:けいじ 

けいじ:何が、というのではなく、何となく全体的に自分には相容れぬものがありました。ごめんなさい。
満月:これって昔はやった歌のこと?なんかオリジナリティ、ある?
あずさ:つまらん。どうでもいいけど、ベージュのコートだなんてインパクトのない女だぜ。